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「確か…出逢って1ヶ月ちょっと経ってからでした」
「あー多分それ合ってるわ。俺が桔梗から相談受けたのもそれぐらいだったから」
「そう…詳しい経緯とかは聞かないし別に2人の付き合いに反対するつもりもない。だけど、これだけは言わせて」
ソファに座る兄さんが僕とキョウ君を交互にジッと見る。
その瞳は見たことないぐらい真っ直ぐで真剣なモノだった。
「…男同士の付き合いは簡単じゃない」
「…はい」
「俺達も公言している訳じゃないけど、大学時代の友人達皆に受け入れては貰えなかった。現に今だって、母さんに一番反対されてる」
どう言った経緯で兄さんと蓮さんが付き合うようになったのか、それを周りの人間はどう思ったのか…詳しくは知らないけど、決して全て上手くいくことはない。
今はまだ、僕達の関係を知っている人達には認めて貰っているけど、この先そんな人に出逢えることの方が少ないだろう。
膝の上で握り拳を作る兄さんの手に、ギュッと握り締めるように手を重ねた蓮さん。
2人は互いに見つめ合っていないけど、心と心が繋がっていると僕には見える。
相思相愛…そんな言葉が当てはまる2人を見ているからこそ、僕はキョウ君との未来を叶えたくなったんだ。
「…分かってます。俺達の…"僕"達の関係は簡単なモノじゃないって…」
「…な、ずな…」
「でもね、兄ちゃん。今ここに僕が"僕"として居られるようになったのは、キョウ君のおかげなんだよ?」
いつまでも自分を偽っていたら本音で話せないと思い、数年振りに素の自分で兄弟に接することにした。
突然のことに兄ちゃんと柊は驚き、蓮さんも初めて見る僕の姿に瞬きの回数が多くなる。
そんな中でも、キョウ君だけはいつもと変わらない。
「…薺が、薺らしく居られる…?」
「うん…その前に、先に謝らせて。あの事があってからも2人は変わらず僕に優しくしてくれたのに、その優しさを受け止めれなくてごめんなさい」
背中を曲げて頭を下げる。
「えっ?えっ?」と柊があたふたするのに対して、兄ちゃんは何も言わない。
それが、もしかしたら許されていないのかと思い顔を上げることが怖くなった。
だけど、そんな僕の頭をポンポンと誰かに撫でられて、その手の先を見ると隣から伸びていた。
「…大丈夫だから、棗さんを見てみなよ」
キョウ君にそう言われて恐る恐る顔を上げて前にいる兄ちゃんを見る。
その姿に思わず「…えっ」と声が漏れた。
…だって、兄ちゃんが顔を手で覆って蓮さんの胸の中で震えていたから。
「…兄、ちゃん?」
「…嬉しかったんだよ。やっと本当のお前に会えて…棗はずっとソレを願ってたからな」
きっと泣いているであろう兄ちゃんの代わりに蓮さんが言った。
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