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epilogue
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目の前に広がるのは、花壇に植えられた赤いチューリップ畑だった。俺は木でできた小さな椅子に座り、それをぼんやりと眺めていた。
俺は自分の家の庭にいるのだと分かった。
庭にある花壇は大きくて、その横に小さな木が植えられている。地面に生えている雑草は綺麗に手入れされている。チューリップは母さんが父さんとの思い出の花だと話していた。母さんの1番好きな花だと話してもらったことがあった。
なんとなく俺もその花を好きになった。卵のような形でその中には大切なものでも隠しているような雰囲気が気に入っていた。
空は青く晴れていて、風が心地よい。季節はおそらく春だと思った。風によって波うつチューリップは赤い絨毯のようにみえた。
そんな光景を遮るかのように一人の男が目の前に現れた。彼は綺麗な坊主頭をしていて、年はまだ小学低学年のようだ。顔は太陽の光が眩しくてはっきりとは見ることができない。
でも、悪い顔ではないことは分かった。
俺が彼を見ていると、彼は手を差し伸べてきた。
そして、俺に向けて何やら話し始めた。
彼の言葉を聞き取ろうとしても、ベルのような音が鳴り始めて何を言ってるのか分からなかった。
俺は彼の言葉は聞かなくてはいけないと思い彼の声を聞くことに集中した。
「ここで待ってろよ。必ず帰ってきてやる‼︎」
彼は優しくどこか力強い声でそう俺に言った。
その直後に視界が歪み始めて自分が泣いているのだという事が分かった。
どうして、こんなに悲しい気持ちなのだろう。
(あぁ、そうかこれは…。)
ベルの音が大きく鳴り響き彼と赤いチューリップは闇の中へと消えていってしまった。
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