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「そうか。お前の城にも既に一度侵入されて居るのだな。」
事の概要を話し終えるとフィル王子は顔を少し歪めながらそう言った。
「あぁ。直接接触があった訳では無いのだが…」
「それも変な話だよな…」
「どうして…ですか?」
「仮に、連続事件の犯人がその侵入した人間だとすれば警戒されて居るとはいえどまだ本格的な…
そう、ちょうどルイの様な護衛がついてしまう前にお前の瞳を奪った方がずっと楽だ。」
「まぁ、それはそう…ですよね」
フィルの言っている事は妥当だろう。
もしも犯人が瞳を狙う只の愉快犯だとすれば、侵入した時点で瞳を奪う事ができ、目的は達成された筈だ。
「何故、その場で行動に移さなかったのだろう…」
「目的が…」
俺の声に二人が此方を見る。
「そいつの目的が、初めからレインだったとすれば。」
レインの顔が少し青白くなる。
「次の目標がレインである訳ではなく、この一連の事件の最終的目標がレインだったとすれば、犯人にとってその時に瞳を奪うのは時期尚早だったのかもしれない。」
そう考えるのが妥当だ。
「そのセンは濃いだろうな…」
「すると、私の所為で犠牲になってしまった人が多数いるという事か…」
レインの瞳が悲しそうに揺れる。
それすらも何処か憂いを帯びていて美しいと感じてしまうのはきっと、不謹慎なのだろう。
「だからこそ、一刻も早く犯人を捕まえようという事だな」
「はい。それでーー」
「失礼致します。」
ドアの外から声が掛かった。
バリトンの声は姿を見ずも良い声だと感じる。
「あぁ。」
呼びかけにフィル王子が応える。
「お茶をお持ち致しました。」
入ってきたのはまだ若い、俺と同じ黒髪を少し伸ばした男だった。
清潔なその姿には何故かどこか深々と迫力を感じた。
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