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レナードから甘く囁かれた言葉。
ああ、もう駄目。甘ったるくて視界が回る。ドキドキしすぎて、心臓が壊れてしまいそう。そのくらいこの恋人みたいな雰囲気は、悟の許容範囲を大いに越えていた。
完全に固まって真っ赤になっている悟に、レナードはふっと笑い、可愛いと今度こそは唇を近づける。そして、うっすら触れたと思った瞬間、レナードでもなく悟でもない声が部屋の中に響いた。
「……で? この茶番にいつまで付き合えばいいのですか?」
「! ダ、ダリウス様……!」
その人物はダリウスだった。呆れ顔をして部屋の扉に手をついている。見られていた。それはいつからだろうか。
ますます悟の頭がパニックになる中で、レナードは舌打ちをしながら悟から身を引いていく。
「なんで来た」
そして、なにごともなかったかのように、衣服を着替え始めた。
「レナード様。私は昨日に申し上げましたよね。本日は早めに出迎えると」
「ああ、聞いている。だが、邪魔をするとはどういうことだ」
「はあ……これでも限界まで待ったのですがねえ……心外です」
「ど、どういうことですか?」
早めに出迎える。そんなこと昨晩のレナードは、これっぽっちも言っていなかった。もしかして、レナードが早く起きていたのも、これが理由だからでは。
悟は新たに知る事実に戸惑っていると、ダリウスがベッドへ近づいてきた。そして、ベッドの前で止まってはニコリと爽やかに笑う。
「これはこれは、サトル様、おはようございます。先日はアップルパイをありがとうございました。まさかレナード様が大量に注文した林檎があのような素敵な形となって戻ってくるとは……美味しく頂きましたよ」
やはりダリウスのこの言い方には馴れない。けれど、悪気はないことはわかっている。
最近知った事実だが、あのレナードが買ってきた大量の林檎は、レナードの指示のもとダリウスが手配したらしい。林檎だけではなく、まだ他にもたくさん裏でレナードと悟に手を貸してくれていて、例の強姦事件はなんだったのだろうと言えるくらいに関係は思っていたよりも回復の兆しだ。レナードはあまり良いように思っていないらしく、強くあたる時もあるけれど。
そして、その林檎の件ではお世話になりました、なんて丁寧に返事をしている場合ではない。
「あ、いえ、そんな……それより、レナード様は本日朝が早かったのですか?」
「聞いていませんでしたか?」
「……やめろ。俺が言ってなかっただけだ」
言っていなかっただけ。
でも、レナードはいつも教えてくれる。それに、朝が早いことをわかっていてのアレだ。案の定、ダリウスにも見られて、穴があれば入りたいくらい恥ずかしい気持ちなのに。
だからこそ、悟はその一言で済ますレナードを許せなかった。
「どうして教えてくださらなかったのですか! 早く起きていて変だと思っていたのですよね……聞いていたら起こして差し上げたのに!」
「キスで?」
「今この状況で、そのような冗談を言いますか……!」
信じられない。まだ朝の雰囲気から抜け出せていないのだろうか。悟が怒っていることに気づいていないようだった。
ますます怒りでぷるぷると身体が震える。当分はキスさせてやらないと悟は心の中で決めた。
「ああ、奥様がお怒りのご様子ですよ、レナード様?」
その様子にくすくすと滑稽に笑うダリウス。悟の矛先はダリウスにも向かって。
「ダリウス様もダリウス様です。以前までは念には念をと私に教えてくださっていたではないですか……! それと私はレナード様の番であって、妻ではありません!」
「……おや、私も怒られるのですか?」
「当たり前です!」
限界まで待ってないで、さっさと入ってくればいいのに!
悟はそう続けた。時間がないと知っていたが、これはレナードにとってもダリウスにとっても自業自得である。
αが優位に立つという世界の中で、レナードの家ではΩの悟が優位に立っているという不思議な朝の光景であった。
End
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