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【恋人にリンゴを】はっぴーらんちたいむ!
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レナードはパタパタとシーツを叩く。そして、なにか物足りないと布団の中で唸り声をあげた。悟が腕の中にいないのだ。温かくて、ふんわりいい香りがして、愛しい人。
ようやく重い瞼を開き、朝の眩しさに眉を寄せる。それで、やっぱり悟はいない。悟のいた場所はすでに冷たくなっていた。
時間を確認すれば、もう少しベッドでゆっくりしてもいい時間であった。しかし、レナードはこんな寂しいベッドで過ごす気にならなくて、だるい身体を思い切って動かす。
悟はキッチンにいた。朝食を作るためだろうが、そんなに早くベッドから出なくてもいいじゃないか、とレナードはますます不機嫌だ。まずそのことを指摘してやろうと思っていると、レナードの姿に気づいた悟が自ら近寄ってくる。
「……あ、ちゃんと起きてきた。レナード様、おはようございます。朝食はすでに出来ていますので持ってきますね。まずは目覚めのモーニングティーをどうぞ」
と、悟は紅茶をいれ始めた。
「おはよう。その前にだ。なぜベッドにいない? 起きたら冷たいベッドだなんて寂しいじゃないか」
そんな悟にムスッとしたレナードは、邪魔をするように後ろから抱きつき、顎を肩の上に乗せる。
すると、コトンと紅茶の入ったポットが置かれる。
「あ、ちょっと……レナード様……今、紅茶を……」
悟が困ったようにしていても、今はお構いなしである。ポットから完全に悟の手が離れたことを確認すると、悟の身体をくるりと回して向き合った。
「先にすることがあるだろう」
「んっ」
柔らかい唇に自分のものを重ねる。そのあと自分の唇を舐めると、きっと朝食のだろう。少し塩っけのある味がした。
そんなレナードを悟は押し退けて。
「もう。今から紅茶をいれますので、目を覚ましてくださいね?」
「日本茶ではないのか」
「残念ながら、本日は紅茶です」
そう言いながら、慣れた手先で紅茶をいれていく。
「そうか。……だが、サトル、これで話を変えたと思ったら大間違いだ。俺はなぜベッドにいなかったと聞いている」
「……内緒です。けど、すぐあとにでもわかりますよ」
「だったら、今教えてくれてもいいだろう」
「駄目です。朝食を用意しますので食べましょうか」
すんなり躱されてしまい、レナードの中にモヤモヤが残った。しかし、多分きっとこれは教えてくれないパターンだろう。
レナードは仕方なく席について、悟のいれた紅茶を口にする。味は言うまでもなく、流石なものだった。
そして、次々と運ばれる朝食。バターを塗ってあるトーストがいい匂いである。あとはハムエッグにサラダ、デザートに林檎がプレートに乗ってあった。紅茶のポットの隣には、コーヒーのポットも用意されて。
悟が席につくと「いただきましょう?」とレナードに微笑んでくる。なんだか悟は楽しそうだった。その内容がわからないから、モヤモヤするしかないのだが。
美味だった朝食を済ませて、レナードは仕事に向かう準備をしていた。シャワーを終え、身だしなみを整え、そして、スーツに着替えて……。あっという間に出発する時間である。その間、やっぱり悟は何も言ってこなくて。そろそろもどかしさが爆発しそうであった。
「……もう外出をするんだが……」
ムスッとそれが表情や声に出まくっている。
「はい。もう種明かしをしますよ」
その姿がどこか可愛げがあり、とても面白くて、悟はクスクスと笑った。そして、悟からレナードへ渡される紙袋。
「どうぞ。今日早く起きたのは、お弁当を作っていたからなんです」
レナードは目を丸くして、紙袋の中を見てみる。そこには何個かの容器と水筒が入っていた。
それから、悟は同じ容器をレナードに見せて。えへへ、と照れくさそうに笑う。
「それで……私も同じお弁当を作ってみました。場所は違いますけど、一緒に食べましょうね」
なんだ、その可愛すぎる考えは。
レナードは悟と紙袋を交互に見て、そのまま停止する。寝ている間に悟がせっせと作っているのを想像すると、何ともいえない気持ちでたまらない。
「………………今、食べよう」
いろんな思考を巡らせて、結果レナードから出てきた言葉はこれだった。その言葉に悟はプッと吹き出す。
「ふふ、何を言い出すかと思えば。駄目ですよ。お昼ご飯を作ったんですから、お昼に蓋を開けて食べてください」
おかしい人、と笑う悟をレナードは抱き締めた。そこで悟の笑い声も止まって。背中に悟の手が添えられる。癖になりつつある頬擦りをされて愛おしくなり、柔らかい黒髪を撫でた。
「時間を作って、ちゃんと食べるから。あとメッセージも送る」
「はい、お待ちしております。気をつけて、いってらっしゃいませ」
このあと、レナードは何も言っていないのに表情に出ていたらしく、ダリウスから「これから会合なので、惚気ないでくれますか」と言われてしまうのである。
数時間後──。
悟の携帯からメッセージの受信の音が鳴った。悟はワクワクしながら携帯を手に取る。メッセージボックスを案の定レナードからで、それを開くと「今から食べる」とのことだ。律儀に蓋を開けられた弁当の写真まで添付されていて。
「中身、一緒なんだけどな……」
嬉しくて撮ったのかな、と思うと微笑ましい。
悟はいそいそと弁当の蓋を開けた。メインのサンドイッチとサラダにパスタとビーンズ豆をトマトソースで煮たもの。そして、ここにもデザートとして林檎が添えられていた。ちなみに水筒の中身は簡単な野菜スープが入っている。
全部食べてくれたら嬉しいな。
そう思いながら、悟はサンドイッチへかぷりとかぶりついた。
End
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