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【恋人にリンゴを】愛するのも程々に
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もぞり。
悟はシーツの中で身体を動かし、目を覚ました。目覚めてすぐに香るレナードの匂い。それはレナード本人からではなく、悟の着ているレナードのシャツからであった。昨晩、激しい行為で気を失ったものだから、身体を綺麗にしてくれたレナードが着せてくれたのだろう。悟は下着に、そのレナードのシャツを着ている状態だった。
それよりもだ。隣にレナードがいない。珍しいな、と思いつつ時計を見ると、まだ眠かった意識が一気に覚醒した。
「えっ!」
起きる予定の時間をとうに過ぎていた。時計が壊れてるのかと一瞬思ったが、どうやって見ても秒針は回っている。確かにこれではレナードが先に起きていてもおかしくはない。珍しいのはレナードではなく、悟のほうだったのである。
こういうことはしたことがなくて、ぐっすり眠ってしまった自分にも驚きなのだが、どうしようと頭はパニック状態だ。レナードに紅茶もいれてないし、朝食だって。そうだ、その前に服を着替えて、髪も整えて……。
まずはベッドを出てそれからだ、と思った瞬間だった。
「へ……?」
情けなくも、脚は立つ機能を忘れたかのように、まったく力が入らず、そのまま床へペタンと座ってしまったのである。
なんで、どうして。
悟の思い当たる節はもちろん一つで、かああっと頬が染まる。そ、そんなに激しかったっけ。腰と臀部の鈍痛。気づいていくほどに、昨晩の光景が鮮明になってきて悟は両手で顔を隠した。
こんなことって本当にあるんだ。
だとしても、このままではいられない。そう思い、悟はベッドを支えに立ち上がろうとするが、驚くほどに脚へ力が入らず本当に立てない。笑うを超えて、これはもう笑えない状態だ。
すると、部屋の扉が開いて。
「サトル……なんだ起きてたのか。なかなか起きてこないから起こしにきたんだが……それで、そこに座って何をしてるんだ?」
とっくの前に起きているだろうレナードが現れた。
レナードはちゃんと着替えているし、髪も整えているし、今の自分とは正反対で。悟は小さく唇を動かす。
「……ない」
「ん?」
「……立てない」
「……は?」
「昨晩のせいで立てないんです!」
冗談だろう、と聞き返そうとしたレナードだったが、悟の瞳からポロポロと落ちる涙を見てぎょっとした。急いで悟に駆け寄って腰を下げてみたものの、悟に胸を押される。
「いや……あー、悪かったよ……とりあえず、ベッドに座らせるから」
人の手がなければ立てない状態なのに、悟は何度もレナードを押して拒否した。それが悟の意地だった。
しかし、力でレナードに勝てるわけがなく、抱き上げられてベッドへ座ると、しくしくと涙を流し続ける。
「レナード様に紅茶もいれてないし、髪もボサボサで……なんて情けないんでしょう」
悟はボサボサと言うが、少し梳かせばいい程度である。レナードは撫でて慰めるという意味も込めて、悟の髪を手櫛で梳かした。そして、泣き続ける悟を包むように抱き締める。
「俺のせいだし、すまないと思うが、たまにはいいんじゃないか。こういう日も。可愛らしいし、愛おしいと思うよ」
柔らかい声で、悟の目尻に溜まった涙をちゅっと吸い上げた。慰めて、甘い雰囲気に。レナードの頭の中には「レナード様……」と甘えるような声で呼ぶ悟が描かれていた。
しかし、それはすぐにぶち壊されてしまう。
「……私は嫌です……っ」
「ああ……」
悟は手で顔を覆い、レナードを拒否してしまった。
それからというものの、悟にとってこのことは相当ショックな出来事だったらしく、慰めるのに時間と労力を費やして、逆にレナードが泣きたい気分となる。手加減の重要さを心に染みた日だった。
End
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