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【恋人にリンゴを】ご主人様の溺愛メイド
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悟が執事じゃなくてメイドだったらな話。
ここは立派なお屋敷。持ち主であるレナード・ローウェルは若くして会社を立ち上げ、一流の経営者である。そんなレナードに溺愛している人がいるという。それは、どこかのご令嬢や芸能人のようなセレブ達ではなく、屋敷で働くメイドというのだから驚きだ。その溺愛っぷりは屋敷の中では有名で、なにかあれば、あれよこれよと瞬く間に噂が広がる。
そして、その噂のメイドはというと、もうすぐ帰ってくるご主人様にそわそわしていた。真っ白なエプロンを結び直して、頭につけているヘッドドレスも直して。変じゃないよね、と周りを見てはシスターのような長い丈の黒いワンピースを揺らす。
もうこの姿に慣れてしまったが、時々不安に思う。それは男なのにメイド服を着ているからだ。
ここへ雇われた時、てっきり執事のような格好をするのかと思えば、渡されたのはメイド服。様子を伺ったところ、男女きちんと服装が分かれているし、なにかの間違いかと指摘すると、レナードの命令とのことだった。不思議に思ったが、住み込みでこの給与を逃すのは惜しい。というわけで、悟はこのままメイド服で働くこととなったのである。今ではレナードが喜ぶのならと、絆されてしまっているわけだが。
身だしなみを整えて給仕の準備をしていると、この屋敷の家令が近づいてくる。
「悟、レナード様のお帰りだ。さっそく部屋へとのご指名だから紅茶を持っていくこと」
「はい!」
悟と呼ばれたメイドは、家令の指示に元気よく返事をした。これは緊張をほぐすようなものだった。
今まで主人に叱られたことはないが、それなりのオーラに圧倒されて、いつも心臓がドキドキする。それだけではなく、スキンシップも多くて時々一線を越えた行為までするから、なにが起こるかわからないという意味でもドキドキだ。愛を囁かれた時なんか恥ずかしくてたまらない。
悟は今までのことを思い出してかあっと頬を染めつつ、紅茶の準備を終えた。いよいよレナードの元へ向かう時だ。高鳴る鼓動を落ち着かせて、部屋に向かい、ノックをする。
「ご主人様、悟です」
すると、中から「どうぞ」という声が聞こえてきて、悟はドアノブを回した。
レナードはジャケットを脱いで、本棚の前に立ち、本のページをペラペラとめくっていた。悟の姿を見て、表情が柔らかくなる。
その表情を見て心が和んだ悟は、ワゴンを止めてレナードへ一礼した。
「おかえりなさいませ、ご主人様。紅茶をお持ちいたしました」
「ああ、ただいま。紅茶は机に置いてくれ」
「はいっ」
さっそく紅茶の準備をすると、悟の周りに紅茶のいい匂いが立ち込める。
悟はお茶をいれるのが好きだ。茶葉やメーカーによって香りや色がまったく違うし、レナードのために毎日異なるものをいれているのがとても楽しかったし、褒められると嬉しかった。
そのことをレナードも知っていて。レナードはレナードでいれてくれた紅茶は勿論のこと、悟の表情だったり、しなやかな指の動きを楽しんでいた。
ティーカップに注いだ紅茶を机へ持っていくと、背後からコツコツと靴音が聞こえてくる。その音に反応して悟が振り向くと、レナードが本棚から机のほうへ向かってきていた。レナードは、そのままオフィスにあるようなソファーチェアへと座る。一通りの様子を見届けていたら、レナードはふっと笑って腕を広げてくる。
「サトル、おいで」
悟は思わずドキッとしてしまった。顔の整った外国人がさらっと言うと、かっこよくて様になっているというか。メイド服という女性の格好をしていて、心も乙女に染まっていっているのだろうか。
どちらにしろ、悟へ確実に効いていて動揺が隠しきれない。
「え、あの……で、ですが……」
レナードの言うそれは、膝の上に座るということで。ご主人様の膝の上。それ以上のことはしているはずなのに、なぜか悟には勇気が必要だった。
そんな悟へ、レナードはとどめを刺すように繰り返し言う。
「おいで。主人の命令は?」
「絶対、です……」
「いい子だ」
そう、ご主人様の命令は絶対だ。悟は遠慮がちではあったが、レナードに近づいていく。一瞬、見下ろす形になったのが新鮮に感じた。
「失礼いたします」
そして、レナードの膝にちょこんと座る。
それは本当に膝先に尻を乗せる程度のもので、レナードはこのよくわからない距離感に笑い、即座に悟へ手を伸ばした。
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