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今までも
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仕事に一段落ついて、気分転換に本でも、と手に取ったが腹の虫が鳴いたので食卓へと行くと先程の少年が入浴後の食事を摂っていた。
「タキア、オレにも」
「御意」
現れたカメリアに話しかけようとするスアムは、スッと目の前に出された手のひらに口を閉じる。
「タキアに聞かなかったか?話は食事の後だ」
運ばれてきた食事を前にマナーも何も気にせず自分の好きな様に食べる。
これぞ自分が望んだ自由の小さなひとつだ。
カメリアはこの状況を好ましく感じながら、食事の時間を噛み締めた。
食事の後、談話室へと移動してスアムと二人きりになったカメリアは、ソファーに座ってパラパラと本を捲り、知り合いや血縁にスアムがいないことを魔法書で確認すると溜め息をついた。
「話だけは聞いてやる」
花が咲いた様に輝くスアムから目を逸らし、耳を傾ける。
「僕のお祖父ちゃんを助けて下さい」
「それは最初に聞いた」
「お祖父ちゃんは僕のお父さんの代わりに良くしてくれて……」
「お前の父親はとっくに死んでるのか?」
「いえ、お父さんは仕事で家にいなかったものですから……」
「いい親父さんだな」
カメリアの応えに怪訝な顔をしたスアムは話を続けた。
「ここのところ病気でふせっていて、お医者様に診てもらったらあと一ヶ月だって言われて…………どうかお祖父ちゃんを助けて下さい」
頭を下げたスアムを見て、カメリアが一言。
「無理」
顔を上げたスアムは困惑した顔をカメリアに見せた。
「どうして……ですか?」
「…………いや、聞くとは言ったが引き受けるとは言ってない」
「そんなっ」
「じゃ、そういうことで。さぁ、帰った帰った。オレはお前みたいに暇じゃないからな」
「───ない」
ソファーから立ち上がり、部屋から出て行こうとしたカメリアにスアムは言った。
「帰らない。貴方がお祖父ちゃんを診てくれるまで!!」
「…………勝手にしろ」
すぐに諦めて出て行くだろうただのひとりに時間を割くのは勿体ない。
そうやって、人との関わりを避けてきたのだから。そしてこれからも続けていく予定だ。
バタンと背後でドアが閉まる音を聞いて、自室へ向かう。
「無駄な努力をするらしい。根を上げるまでお前に任せる」
「御意」
廊下に立っていたタキアが恭しく頭を下げた。
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