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朝からソワソワしたスアムは準備もバッチリだと自分で何度も鏡を確認し、朝食を食べ終えてからも確認していると部屋をノックされた。
恐る恐るドアノブを開けるとそこにはタキアが立っていた。
「スアム様。こちらへお着替えなさって下さい」
「え?」
「その服装ではカメリア様のお側を歩くことは出来ません」
「え……あ……そう、なんですか?」
「はい。この服は差し上げますので大丈夫ですよ」
服だってそこそこ高い。スアムの着ている服だってご近所からの譲りものだ。タキアが持ってきた服は明らかに新品未使用。ドキドキしながら受け取ったスアムはさっそく着替えた。
その着替えの途中で見た服のタグには庶民のスアムの耳にも入るぐらいの高級ブランドの名前が記されていて、着替える途中からぎこちなくなった。
着替えを終えて、部屋の外で待機していたタキアに着方が間違っていないか確認してもらっていると、普段着と言うには畏まりすぎていて正装といえばラフ過ぎるシックな服に身を包んだカメリアが遠慮なく部屋に入ってきた。
「出掛けるぞ」
「只今支度を終えたところです」
最終確認を済ませたタキアがカメリアに報告する。
「………………ふん。馬子にも衣装か」
ジロジロ見た後の一言にスアムがムッと口を引き締めた。それを見たタキアが苦笑しながらスアムに耳打ちをする。
「あまりにお似合いなので照れていらっしゃいます」
「タキア、余計なことを言うな」
「申し訳ございません」
地獄耳らしいカメリアをじっと見れば確かに耳が少し赤くなっていた。タキアの言う通りだと思いながらカメリアにスアムが近づくと一歩遠ざかられた。もう一歩近づくと更に遠ざかられる。
「なんで逃げるんですか!!」
「…………なんとなく?」
「カメリア様、お時間が」
「あぁ、そうだな。行ってくる。あとは頼んだぞ」
恭しく頭を下げたタキアを一瞥し、カメリアがスアムの腕を掴んで引き寄せた。足元に円形の魔法陣を展開させる。青く淡く光るそれをスアムが興味深そうに見ていると、一瞬にして視界が黒く眩んだ。
足がカメリアの屋敷とは違う感触であることを認識したものの、頭がくらくらしていた。スアムが頭を抑えていると、カメリアは溜め息をついてスアムが頭に当てている手に触れ、治癒魔法でスアムの乱れた魔力を正常に戻した。
「……治った」
目を丸くしてカメリアを見るスアムに分かるようにもう一度溜め息をついた。
「あのくらいの魔力に当てられてどうする」
移動系の魔法は上級者にとってはある程度使えなければならない。けれど移動魔法の基本にすら慣れていないスアムが体験すれば魔力に当てられるのは当然といえば当然だが、スアムの魔力値を知っているカメリアにとっては宝の持ち腐れとしか思えなかった。
「行くぞ」
「え、僕の家はこっちですけど」
「誰がお前の家に行くと言った?」
「えええ!?行ってくれないんですか!?」
「うるさいと置いていくぞ」
高く聳える魔王城がカメリアの行く方向にあるものの、貴族邸ばかりで見た事の無い場所なので、不安になったスアムは急いでカメリアの後について行く。
「絶対に僕の家に来てくださいね!!」
「大声で言うな。仕事が終わったらな」
どうにかして約束を取り付けたスアムは満足して黙ったままカメリアの後ろをついていくが、ピタリと足を止めたカメリアがスアムと向き合った。
「利き手はどっちだ?」
「右ですけど」
「左手を出せ」
言われるがまま左手を差し出したスアムの手を掴み、カメリアは右の手の甲から出したブレスレットをスアムの左手首に装着した。
透き通るような赤い石の周りに一回り小さい青い石がポイントで、蜂蜜色の石で手首を覆ったブレスレット。
「何ですかこれ?」
「防御補助アイテム」
グイグイ引っ張ってもビクともしないブレスレットにスアムは焦る。
「外れないんですけど」
「外せないな」
「え……どうするんですか?」
「そのまま風呂に入っても問題ない。濡れないし汚れない代物だ」
「いや……。なんでこれを?」
「ここはいろいろと危ないからな」
再び歩き出したカメリアの後をスアムがついて行くと、その建物が近付いてくる度に目的地が何処か自然と分かってくる。
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