アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
信じる一歩
-
カメリア様が帰ってしまってから数日。魔王城から知らせが来て、再び出向くことになった。
礼儀なんて全く知らないスアムは初めオロオロしていたが結局開き直った。
庶民が相手であることは魔王様は承知であるだろうし、なにせ王城から迎えが来るというので隠しようもない。
成るようにしか成らないのだ。
せめて失礼だと思われないくらいの礼儀と態度で行こうと決めた。
知らせが来て数日。王城の馬車が我が家の前に停まった。
中から黄緑と黒が基調の服を着た者が降りてきた。一度王城に行ったスアムはすぐに分かった。一緒にお茶をしたアシスだ。
「スアム・タリズ」
「はい」
不安そうに顔をする母に大丈夫だと言い聞かせて、アシスの前に立った。
「……魔王様がお呼びだ。乗れ」
年が違わなそうなのに、ものすごい偉そうな態度だ。実際偉いのだが。
進む馬車の外は見ることが出来ない。というのも、目の前にいるアシスに、外は見ないよう釘を刺されてしまったからだ。カーテンの向こうの景色に興味はあるが命を捧げるほどではない。
暫くして馬車が止まりアシスがカーテンの向こう側を確認すると、戸を開いた。
「行くよ」
気怠げに馬車を降りたアシスのあとを追いかける。
左右には人がズラリと並び、微動だにしなかった。彼らは皆黒と黄緑が基調の服を着ていて、アシスと何らかの関係があると分かる。
ピリピリと神経が削れていくような鋭利な視線の通りを過ぎ、お茶をした部屋へ通された。
「ここにいて。僕はまだ仕事があるから。あぁ、誰か来てもこの部屋から出ないように。出たら身の安全は保証しないからね」
広々とした部屋に一人ぽつんと残された。
多分、学校の話だとは思うが、なかなかに盛大な出迎えだった気がする。
部屋の中をうろうろして、部屋の中のものをじっくり見て、やがてやることが無くなってソファーに座った。
ソファーの上で縮こまって、目を閉じればカメリア様を思い出す。一日だって忘れたことは無い。
岩山で押しかけとはいえ泊めさせてもらった御礼も何もちゃんと言えていない。なのに、たくさん言葉を掛けてもらって申し訳ない。
学校に行くとは言ったもののお金も無いし、学ぶのも到底追いつくと思えない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 177