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新しい日常
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魔王城から馬車でベストルド邸へと移動し、部屋や食堂、客間などを案内された。
「こんにちは。ラクス・レスファイアです」
身長も同じくらいで、可愛らしい人だななんて思っていると、この邸のご夫人だと言うのだから驚きだ。それ以前に魔王を産んだ方だと知った瞬間言葉が出なかった。
「スアム・タリズです。よろしくお願いします」
「うん。ここにいる限り安全は保証しますから。あと、キッチンには入らないでね?」
「?、はい」
「じゃあ、カロエ、よろしくね」
「はい。ラクス叔父様」
スタスタと去っていったラクスの姿が見えなくなると、カロエはスアムを引き連れて歩き始めた。
「基礎のリアス様と実習のグレン様に挨拶に行こうか」
「はい」
「同い年みたいだから敬語はやめていいよ」
「……うん」
カロエと話しながら廊下を進む。よく気を付けないと迷いそうな程に部屋があり、無数に廊下が伸びている。
「この部屋」
カロエがノックをすると勝手に扉が少し開いた。扉をノックしたカロエも驚いた様子だ。
「誰だ?」
焦ったような声が中から聞こえ、カロエが遠慮がちに部屋の中へ顔を出す。
「リアス様、少し宜しいでしょうか?」
「あ、ああっ、全、然っ大丈夫っだ!!」
黒髪に黒い瞳。カッコイイ服に身を包み、透明感のある滑らかな肌はどことなく色香を放っている純血悪魔がリアスだろう。
向かいには、紫色の瞳に黒髪の長身の悪魔がリアスの両腕をつかんでいた。
「全然大丈夫じゃないだろう?」
紫色の瞳を持った悪魔が発した声は震えるほどに妖しく、伏し目がちな目は誘う様にリアスを射止めていた。
「大丈夫っ!!つか、放せっ。終わりだ終わり!!」
「終わり?まだ全然だろう?」
「仕事!!」
「仕事?今日明日は休みだろう?」
「そういうんじゃない!!」
二人の喧嘩に迷うカロエだが、リアスがソファーに座れと合図してきた。
その間に紫色の瞳を持つ悪魔は後ろからリアスに抱きついた。すると、リアスはそれに構わずソファーに座る。
向き合うと、すごい威圧感だ。恐いというより美人すぎて。
「すまない。みっともないところを見せたな。そちらは?」
「スアム・タリズです。ええと、学校に通うので、基礎を教えて頂きたく参りました」
「ほう……自分から来るなんていい度胸だな。引き受けよう」
「ダメだ」
リアスの後ろから却下の声が出た。
「引き受けたらまたオレとの時間が無くなるだろう」
「あのな、ルー。べつにオレはお前から逃げてるわけじゃないぞ」
「それは知ってる。リースは徹底的に逃げるからな」
「分かってるならなんで邪魔すんだ」
「そりゃ、カメリア様なんかのために協力するのとオレとリースの時間を確保するのでは比べるまでもないだろう?」
「あるだろうが。取り敢えず、これにはクレスが一枚噛んでる。それで勘弁しろ」
二人の関係性が見えない。それでいて、カメリア様のことを尊敬しているのか貶しているのか、どちらなのだろうか。
「クレスのお願いであろうと、オレとの時間を……」
「あー、はいはい」
リアスが顔を背けて数秒、紫色の瞳の悪魔が何やら嬉しげに且つ満足げにソファーにふんぞり返った。
「自己紹介がまだだったな。オレはトルン・ベストルド。王城第二部隊隊長で、グレンの兄だ。リアスはオレのだからどんな状況であれ手を出したら生きて帰れるとは思うなよ?」
「おい、ルー……最後のは余計だろ。オレの紹介もまだだったな。オレはリアス・レスファイア。王城第一部隊隊長で、トルンの双子の兄だ。身内の子供たちの基礎は全部オレが教鞭を執ってる。ええと、オレ達の噂はあんまり気にしないようにな」
「いいや、そこは大いに気にしてほしい」
「ルー、いい加減にしないと怒るぞ」
王城の部隊とはどれくらいすごいのだろうか、想像がつかない。
カロエを見ると、苦笑いしているし。
「では、リアス様。スアムは今日からここに住みますので」
「あぁ、じゃあ明日から開始だな」
「明日ハンプディスト学園の大学部に通います。夕方辺りから開始で宜しいでしょうか?」
「構わない。どうせ皆夕方からだしな」
「そうですか。では、グレン様の元へ挨拶に行きますので、お時間お取り頂きありがとうございました」
「大丈夫だ」
口を開こうとしたトルンをひと睨みで黙らせたリアスはさっさと行けとでもいうような雰囲気を出した。
「失礼しました」
ぺこりと頭を下げて部屋を出た。
「噂って?」
「それはおいおい教えるよ。まずは目の前のことに集中しないとね」
「なんでトルン様はいきなり機嫌を良くしたんだろう?最初はすごく嫌がってたのに……」
「二人は双子だから心の中で会話ができるんだよ。双子の特権だね」
「へえ……」
「僕の兄様達も双子だから二人で会話できるんだ。羨ましいよね……相手の気持ちが分かるんだからさ」
「相手の気持ち…………」
少し歩いて、やはりどのドアも同じようにしか見えないが確かに違う部屋のドアをカロエがノックした。
ガチャリとドアが開いて、赤い瞳に赤みがかった黒髪の長身の人が現れた。
「あ、グレン様」
「カロエじゃん。後ろにいるのは?」
「初めまして。スアム・タリズです」
名乗って頭を下げるとニコリと笑顔を向けられた。
「あぁ、カメリア様のところの……」
「少し、お話出来るでしょうか?」
「今?今か……うーん。べつにいいよ」
グイッとドアを開かれ、中へと促される。
入ると小さな子供たちがわちゃわちゃ遊んでいた。
「すまないな、うるさくて」
「いえ、アオル様のところもいつもこんな風ですから」
「あはは。イオ兄のところはそうだろうなぁ」
テーブルへと招かれ、椅子に座るとグレンが問うてきた。
「グレン様に戦闘の実習を頼みたくてですね」
「OK。大丈夫。クレスにも言われてるしな」
「ありがとうございます。では、リアス様のところで基礎をある程度教わりましたらグレン様に実習をお願いします」
「了解。にしてもリアス兄様に基礎頼むとか……」
「クレス様のご意向で……」
「あはは。あれはあれで兄弟バカだからな。でも、スアムはカメリア様のところにいたんだろ?何か教わったか?」
「防御魔法などを少し」
「ま、防御魔法が出来れば自分の身は自分で守れるからな。最初に教わるには妥当か……。大学行くんだろ?何かやりたいこととかあるのか?」
「い、いえ……」
「しっかり、決めとかないとな。じゃ、オレはこれから任務があるからこれくらいで大丈夫か?」
「はい。ありがとうございます。グレン様」
カロエがニッコリして御礼を言ったのでスアムも慌てて御礼をいい、頭を下げた。
何がしたいのか、しっかり考えなきゃいけないな、とスアムは胸に留めた。
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