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春の嵐
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学校に通い始めて早三ヵ月が経った。
基礎もだいぶ出来るようになり、今は応用を学んでいる。
文字も以前に比べればスラスラと読めるようになった。難しい書物だって辞書を使えばちゃんと読める。
努力をしてきた事が身についているのだと実感して嬉しくなってしまう。
まさか、学ぶことがこんなに嬉しいとは思わなかった。
一人黙々と学院の図書室で勉強をしていると向かいの席の椅子が引かれた。そこに座った生徒がスアムの見ていた本を取った。
「なに?攻撃魔法の合わせ術?」
「真面目だねぇ」
後ろからも声がして、驚いて振り向く。どちらの生徒も嫌な笑顔をしていて、逃げようと立ち上がると腕を取られてしまった。
「どこ行くんだよ」
「帰ります。もう、時間ですし」
「ちょっとくらいオレ達に付き合えよ」
「無理です放してください」
住まわせてもらっているベストルド邸の皆さんにも、学校に通わせてくれているカメリア様にも迷惑をかけたくないから、なるべく穏便に済ましたい。
軽く睨むが相手は全く動じない。
殺気を放つと、小馬鹿にした様に鼻で笑ってきた。
「校内での戦闘、魔法、飛行は禁止。分かってんだろ?」
「分かってますが、状況によります」
「オレ達は戦いにきたんじゃない」
「勉強しに来たようにも見えませんが?」
「いやいや、勉強だよ」
「君に教わりに来たんだ」
まさか。自分よりも頭のいい奴などたくさんいる。
口実だと口よりも雰囲気で物語っているのだから警戒は解けない。
「他を当たってください」
「お前しか適任がいないだろ?」
「どういうっ──!!」
腕をひねり上げられて、机に押し付けられた。机に当たった頬が痛い。
「なにっすっ!!いっつ……」
「ほら、喋ると痛いよ?」
油断した。まんまと組み伏せられてしまうとは。リアス様に合わせる顔がない。
どうにかして逃げる方法を考えていると、男子生徒がスアムのズボンに手を掛けた。
「っ!!ちょっ!!お前!!なにやってるんだ!!」
「ベストルド邸に住んでるんだろ?この先の意味、ちゃんと分かるだろ?」
ベストルド邸に住んでいるからなんだというんだ?
全く追いつけない思考をよそに、逃げることが本能として主張する。
「放せっ!やめろっ!!」
「大人しくしてろって。この腕──」
腕を掴んできていた手から突然力が抜けて、前方に居た男子生徒も唖然とした顔でスアムの後ろを見ていた。
「この首撥ねられたくなければその手を放せ」
懐かしい声に力が抜けそうになった。
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