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心の試練
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「いいんですか?」
静かに紅茶を啜るリアス様に問いかけると、鋭い視線がこちらへ向いた。
「こうでもしないとアイツは反省しない。お前もやられて嫌なことをされたら怒るだろう?」
やられて嫌なことがぱっと思いつかなくて、心の中で首を傾げていると、悟ったリアス様はニヤリと笑った。
「たとえば……カメリア様がお前じゃないヤツにキスしてたら?」
「なっ!!!」
「嫌だろう?」
「カメリア様はそんなことしません!」
「分かってる。たとえばの話だ」
確かに嫌だ。僕は確実に怒るだろう。なるほど。
「まあいつものことだけど……」
「いつものこと?」
「かれこれ五十年以上夫夫やってるからな。喧嘩なんて周りにまたかっていう顔されるだけ」
悪魔はゆうに千年は生きるので慣れたものなら大事でなくなるのだろう。けれど当事者にとっては大事だ。
「仲直りの見込みは?」
少し驚いた顔をされたが、ふっと笑って手前にあったケーキにフォークを入れてパクリと食べた後「トルン次第かな」となんとも投げやりな答えが返ってきた。
「それよりお前の話だ」
「僕ですか?」
「そうだ。これからお前は伸びる見込みはあるが、最終目的地はどこにするのか定めておかないとな。ああ、カメリア様との結婚は既に含まれているから安心してくれ」
いや、安心するどころか驚いてます。まさかあのリアス様が僕とカメリア様の結婚は想定内だと認めてくださっているとは。
「いや、あの…………王城部隊を目指そうと……」
「ふむ…………まあ、ありがたいな。お前みたいなもともと素質のある奴は珍しい方でもあるし防御の基礎関してはカメリア様仕込み。いいとこ尽くしだな」
「期待されるほどでは……」
「何を言っている。オレが教鞭を振るうんだ。逃がしはしないぞ」
「………………はい」
そんな爽やかに言われたって内容は鬼だ。今日はお茶だが明日のこの時間には訓練なのだ。逃げ出したいといえば逃げ出したいが、住んでいるのはリハル邸。結局逃れられない。
「ははは。警戒するな。オレが鬼だ鬼だって言われてるのはわかってるさ。ただ、言っておくがオレの訓練は序の口。リハル父様の方がよっぽど鬼だった」
リハル様の方が厳しいらしい。
「オレの訓練が嫌だからってリハル父様の方に泣きついた子供が逆に泣いて帰ってきたことがあってさ、だから言ったのにって」
逃げ場はないって言いたいのだろうか。
「逃げたってどうにもならないのはわかってますよ。僕は自分の弱さを知っているので強くなりたいと思うのは当然でしょう」
僕の答えを聞いたリアス様は安心したように笑った。
「それは良かった」
「それよりリアス様とトルン様の馴れ初めを知りたいです」
紅茶を啜っていたリアス様は僕の言葉に吹き出しそうになった。
「っけほ、っけほ…………な、馴れ初め?そんな……こと聞いてどうするんだ……」
「だって気になるじゃないですか」
にっこり笑う僕に、リアス様は頬を引きつかせた。
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