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別荘地
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沈黙が気まずくて、何か言おうと頭を巡らせていると、ノックなしにガチャリとドアが開いた。
「あれ?先客?」
「メディオ兄さん……」
「なんだよ?朝食持ってきてやったんだぞ。ありがたく思え」
お盆を両手に持ってやってきたのは薄紫の髪が綺麗な少年だった。
スタスタと部屋に入ってきて目の前のテーブルに今日の朝食が広げられる。
「お初お目にかかります。リアスお祖父様の十二番目の息子ルティの五番目の息子のメディオ・オルケルです。短く言えば目の前にいるクリダの兄です」
「初めまして。スアム・タリズです」
所作が少年じみていなくて、なんだかこっちが気後れしてしまいそうだ。
「噂は予々。北の番人の唯一の人だと」
ボッと顔が熱くなる。
唯一の人。その言い方になんだか心が羽でくすぐられたようなむず痒さを感じる。
「??ベストルド邸に来てまだ日が浅いんですか?」
「半年経ちます」
「へえ?」
不思議そうにこちらを見るメディオと朝食を見るクリダ。
クリダの様子もだいぶ良いみたいで、用は済んだので早々に退散することにした。
「それでは、僕は失礼します」
「あ、はい。」
クリダがぺこりと小さく会釈して、僕は会釈を返して早々とクリダの部屋から出た。
廊下を進むと中庭に出た。石畳が続いていて、そちらへ進んでいくと、階段が出てきた。両側に樹木が植えられているので木陰で出来ていて視覚的にも涼しい道だ。辿って行くと海が一望できる丘のような場所に出た。一本大きな木と、その下には白いベンチがある。
でもそこには先客がいたようで、近づくとこちらに振り返った。
黒い瞳に黒い髪。純血悪魔だ。
「なんの用だ?」
「いえ。石畳を辿ってきて……」
「迷い子か……。生憎オレたちという先客がいる。帰ってもらえるか?」
「あ、はい。失礼しましたっ」
ベンチに座っていたのは彼だけではないようだ。座ってるというより寝ているのだろう。
そよそよと吹く風が心地よくて、階段を降りるスピードを少し緩めた。
無事別荘に着けば、海の方からたくさんの楽しそうな声が聞こえてくる。
海に行こうかと思えば、コロコロと黄色いボールが転がってきた。拾うと、ボールを追ってきた子がこちらをキラキラした銀色の目で見てくる。
「はい」
投げ返すと、また嬉しそうにボールを追いかけていった。緩めに投げたつもりだが、受け取る気は元からなかったようだ。きっと追いかけるのが楽しいのだろう。
海の方へ早く行こうと思い、中庭を突っ切って森のようなところを抜けると、屋敷の廊下が見えるはずだと思ったのだが、目の前には壁がある。
おかしい。ここは中庭ではなかったか?中庭であるはずだ。
北の廊下から中庭に出て、東に向かって進んだら石畳の先に丘があった。それは海岸側から見ても地形は合っていた。戻って、北の廊下からボールがやってきて、投げ返し、今度は南に向かったはずだ。確かに別荘の二階の北側から見ても南に棟はあったし、森を抜けないと行けないというのも分かっていた。
もしかしたら南の棟なのかもしれない。棟にしては窓がないが、そういうとところなのだろう。壁を伝って東か西に行けば廊下に出るかもしれない。
そう考えて壁に手をついた瞬間重心を崩した。
驚いて壁に目をやればその先は漆黒。
どうやら壁が回転したらしい。
吸い込まれるように暗がりへと転がり込んだ。
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