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魔王の使い魔
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「知りませんでした。すみません」
『よく頭に入れておけ』
「はい」
トコトコとこちらにやって来て手元を覗き込んできた鷹にフッと鼻で笑われた。
『何を小難しそうに読んでいるのかと思えば遊戯にも等しき魔法の基礎ではないか』
「僕か読んでいるのは応用の方ですよ」
『だから、遊戯にも等しいと言うたであろう。クレスが幼少の頃にはそのような本を細部まで解読し終えておったわ』
「幼少…」
『あやつは本の一気読みも出来たからのぅ。テーブルいっぱいに置いた本を一気に読んで……幸せそうじゃったの……』
しゅんとしてしまった鷹に触れようとするとべしっと手を羽で弾かれてしまった。
『儂に気安く触れるでない』
「少しくらい良いじゃないですか」
『ダメに決まっておる』
『そうだぜ?老けた奴に触るなんざぁ老いが移る』
ボフンと出てきたのは梟姿のアデアだ。
『なんじゃと!?この礼儀知らずの若造が!!』
『あぁん??本当のこと言ったまでだろうが!』
ワーギャーバサバサと鳥類同士で喧嘩していると、流石に煩かったのか、ひょっこりと司書さんが顔を出した。
「あら、トツキ様がいらっしゃる」
『久々に近くを通ったのでな。様子見に来たのじゃ。そしたらこの礼儀知らずが………』
ネチネチとアデアのことを司書さんに言っていると、司書さんは嫌な顔をせずに笑顔のまま何も言い返さず聞き、図書室なので静かにお願いしますね、と最後に一言残し去っていった。
「トツキ様と仰るのですね」
『そうじゃ。そこの若造と違って趣深い名前であろう?』
「あはは。そうですね」
『そうですね、じゃねえだろが!馬鹿スアム!』
ちょっと拗ねたらしいアデアが僕を啄(つつ)いてきた。
「アデア、痛いよ……」
『では儂は忙しいのでな。次会う時にはぜいぜい今よりは強くなっているように』
壁に向かって羽ばたいたと思ったらそのまま壁をすり抜け、魔王城の方角へ飛び立っていった。
『ケッ。いけ好かねえ爺さんだぜ』
「こら、アデア。そんなこと言っちゃダメだよ」
『ふんっ。じゃあ、あの爺さんとオレ様、どっちがカッコイイと思うんだ?』
「え?トツキ様とアデア?そうだなあ……アデアかな」
答えた瞬間ビクッとアデアが反応してバサバサ慌て始めた。聞いてきたのはアデアなのに。
『ど、どこがカッコイイんだ?』
「何だかんだ言ってても結局僕のこと思って言ってくれるし。ちゃんと助けてくれるし」
『ほ、他には?』
「え?うーん……」
『なんで悩むんだ!!この完璧で無駄のない体型とか!!カッコイイ切れ長の目とか!!暗すぎない鮮やかなカラーとか!!沢山あるだろう!!!』
梟の姿で言われても他の梟をまじまじと見た事もないし、体型とか言われても羽でよくわからない。
「そうだね。アデアは綺麗だよ」
手入れされた羽は汚れひとつないし、触りたくなる。色も見ていて飽きない。きっと努力して整えているのだろう。
『き、綺麗…………』
納得するような返答ではなかったようでうんうん悩み始めてしまった。
僕はそんなアデアを目の端に置きながら、勉強を進めた。
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