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いつかの声 sideカメリア
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「………………。」
「あっはー、悪かったって、カメリア」
「はあ。いい。忘れてたオレも悪いからな」
「お、珍しく自分の非を認めた」
「うるさい」
しっしっとリフラを手で追い払い、浴槽に沈んだスアムを引き上げる。
「なっ……ここっ」
「リフラの屋敷だが」
「っひ、人のっ家に……」
「オレが会いたいから呼んだんだ。お前に非はない」
「で、でもっ」
これではいくら説明しても埒が明かなそうだ。
スアムの首筋に唇を寄せ、強く吸い上げて赤く濃い痕を残す。
「大丈夫だ」
軽くキスしてやり、二人で風呂から上がった。
適当に服を着せて部屋から出るとリフラが寛いでいた。
「おい、客室だぞ……」
「お、早かったな。あー、カメリアのことだからそうだと思ったよ。スアムにはこっちの方がお似合いだ」
ぱちんとリフラが指を鳴らせばスアムの着ていた服が変わる。
先程までシンプルだった服が、やたらフリルとリボンの多いスリットの入った黒レースのベビードールに、スアムは顔を真っ赤にしてオレの後ろに隠れた。
「新作新作。後々リストに入れるけど似合うタイプは限られてくるかな」
「………………。」
「あ、ダメだぞ。オレの方が先約だし急を要するんだからな」
「……っはぁ。わかった」
幼馴染みには全てお見通しなのか、オレの羽織っていたガウンをスアムに掛けて頭を撫でる。
「ここで待っていろ。カロエを呼んでおく。くれぐれも、あの梟を喚(よ)んでくれるなよ?」
コクコクと頷くスアムはどこか嬉しそうで、よく分からない。きっとカロエが来るのが嬉しいのだろう。そう思うとカロエも呼びたくなくなってきた。
リフラと部屋を出ると、パタパタとカロエが走って来た。
「お父様、カメリア様」
「おう、悪いな、カロエ。カメリアがスアム呼んじゃったんで相手してくれ」
「はい。大丈夫です」
リフラが予(あらかじ)め使い魔でカロエを呼んでおいたのだろう。嬉しそうなカロエを見て、やっぱりスアムに会わせたくなくなった。
「カメリア、スアムだって一人じゃ心許無いだろ」
「オレがいる。なんの問題もない」
「んなわけあるかよ」
部屋から遠ざかりながらリフラと話す。
本題は部屋に入って防音結界を張ってからだ。
きっとあの梟はいなくなったスアムを探していることだろう。そう思うと少し笑えてくる。
スアムはオレのものだ。あの梟のものではない。使い魔といえど節度は守ってもらわなくては困る。
「あーあ。スアムも大変だなー。こーんな変人に好かれるなんて」
「オレのどこが変人だ。凡人の理解が追いつかないだけだろう」
「…………お前は思ってるほど凡人離れしてないよ」
「…………………………。知ってる」
「なら、いいよ」
痛い所を突く。自分が凡人離れしていると理解していなきゃ保てない脆さを自覚させにくるなんて、コイツも伊達に純血悪魔なわけじゃないと改めさせられる。
スアムを守る為なら自分すらも捧げよう。
雑種と呼ばれるほどに混血な存在でも、なんだかんだ努力を惜しまない姿に惚れて、ころころと変わる表情に魅せられて、北の番人とも呼ばれるこの天才的な存在であるオレの心を掴んで離さない唯一の存在なのだから。
「ほんとカメリアにはもったいないよなー」
「なんか言ったか?」
「いんや、なんにもー」
にししと笑う顔も上品さが溢れる幼馴染みに、溜息をついてこれからの話題のことを考える。
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