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「カメリア様。時を戻してはいけないんですよ?」
「………………。常識や制約は嫌いだ」
「摂理です」
「だいたい、今ある魔法の大多数はオレが開発したものだ。何か言われる覚えはないし使いたい時に使う。そのために都から離れたんだ」
「僕がその魔法を都で使ったら?」
「まず上級の資格を持っていないと使える魔法は限られる。それに見様見真似でやろうなんてお前じゃ無理だ」
無理だときっぱり言われ、カチンとくる。
「なっ、なんでですか」
「第一に発動するだけの魔力保持。第二に魔法陣と呪文とアイテムの確保。第三に繊細な魔力調節。第四に影響範囲の設定と時間軸の調整。まあその他にもいろいろあるが、百歩譲って第二までできたとして、第三でアウトだな」
「全部できたら時間魔法ができるってことですよね」
「まあ、それもそうだが…………。規模が大きければ大きいほど反動リスクも比例する。これは範囲も時間も然り。お前の魔力量は多いが…………理から外れるリスクは魔力量に関係なく平等だ」
「じゃあ今回使ったリスクは?」
「オレがタキアにチクチクガミガミ言われる量が倍になったってところか……」
良いのか悪いのか。タキアさんにとっては甚だ迷惑だろう。
「ほら、花が元通りになったんだ。喜べ」
いや、元々抜かなきゃ魔法を使うこともなかったし、悲しむことなんてなかったのだ。喜ぶといえば喜ぶけれども。
「じゃあ、次は……」
「まだやるんですか!?」
「当たり前だ。さっきのはコントロール力の向上と加減を知る為にやったんだからな。さて、あとは数を熟すだけだな」
ボッとカメリア様の手から火の玉が出現して、僕はトラウマが更新されないことを祈るばかりだ。
「こいつをお前の学年のヤツらの平均値に合わせる。消せる範囲も設定しておくから、攻撃が弱すぎても強すぎても消えないぞ。はい、始め」
問答無用で火の玉に追いかけられ、ひとつ消せばカメリア様がまた新たに投入する。繰り返すカメリア様が面倒だなと呟いて、ガリガリと土の上に魔法陣を描くと、そこから火の玉が現れるようになった。
さすが魔法を開発する御方なだけあって、珍妙なものを作る……。
「……お前は指を鳴らすことができるか?」
「で……できますけどっ……」
「ふむ。じゃあ……音にするか」
「音?」
「先々の話だ。今は別段気にしなくていい」
「はあ……」
「仕込みはするけどな」
その仕込みがキツいっていうのは知っている。先々の話というのだからきっと大掛りなことをやるのだろう。
一時間程火の玉を消し続け、カメリア様が魔法陣を消した。
汗だくだし、調整で少し頭痛がするし、お腹空いた。
そんな僕を気にせずカメリア様は本を一冊僕に寄越した。
「音についてよく知っておけ。それと、その本の内容は極秘だ」
「なんでですか?」
「それがお前の弱点になるからだ」
「え……?」
「お前は音魔法を使えるようにするんだ。だが、基礎のレベルが基準に達したら教える」
「音魔法を使う人はいるんですか?」
「いなくはないが……妖系と海魚系が大多数だ。ただ魔法の数は少ないし妖系と海魚系が使うといっても魔法の副産物程度だ。オレがお前に教えるのは副産物ではなく、常時尚且つ実戦的な音魔法だ」
「今!!今教えてください!!」
驚いた顔をしたカメリア様は呆れたように僕を見た。
「音魔法が使えなくなる状況は限られる。その状況の中、音魔法を使わずに敵を倒すためには?」
「他の魔法などで攻撃する?」
「そうだな。そのステータスが低ければ絶望的だな」
「………………。つまり僕の今のステータスが低い、と?」
元々わかっていることだったが、こうまでハッキリ言われて少し傷ついているということは自分の中で驕るところがあったということか。
「どこまで……上げればいいんですか……」
貴方の隣に立てるくらい強くなると決めたものの、見えてきたと思った道すら遠く感じてしまう。
「取り敢えず、リアスとグレンの訓練修了を得たならオレのところに来い。都の屋敷の方で少しは教えてやる」
結局振り出しか……。でも最初って訳でもない。
まだまだ頑張ることが山積みだ。
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