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第一部隊 sideリアス
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王城第一部隊隊舎にて。
「無事にハンプディスト学園まで送り届けてまいりました」
「ご苦労」
リアスの業務上の側仕えのような立ち位置であるこの男。トルンに日常的に睨まれたりと気苦労も絶えないせいか、何かと引っかかることは質問して事前に把握し、対処したい性格である。
「隊長、質問をしても宜しいでしょうか」
「どうした?」
「スアム・タリズ様はカメリア様のご婚約者で在らせられると聞いております」
「あぁ」
「彼は……この隊舎の結界を誰が張ったのかと私にお聞きになりました」
「あぁ………それは、別に君を試しているわけでも惚気けているわけでもない。純粋な興味だろう。…………己が婚約者のことを知らないとでも?と言いたげな顔だな」
「そ、そんなことはっ!!」
「実際、スアムはカメリア様のことをよく知らないし、二人も出会ってそこまで時が経っていない。………では何故婚約を?」
また顔に出ていたのか?と平静を取り繕おうとするが、既に平静を取り繕っているので、直しようもない。
末恐ろしい隊長だ。
「カメリア様が惚れたんだ。これは周りも担ぎあげなければならないし、焚きつけなければならない。ミロ家の跡取りのこともあるし、本人がその気ならその気のうちに取り付かなければ。というのは周りの貴族の言い分。君もわかるだろう?」
はい、と簡潔に応える。
「それに、スアムは約一年前まで平民だった。カメリア様の仕事も全てを知っている訳では無いだろう」
平民だったからといって仕事の全貌を知らぬ内に婚約するものなのだろうか。普通は全てを承知した上で婚約だろうに。
「それに、二人話す機会もあまり設けていないしな。でも、心配はいらない。何故なら、オレが直々に訓練をつけているし、飲み込みも早い。魔力も申し分ない。将来はウチにスカウトしたいぐらいだが………本人の希望は第三部隊のようだ…」
ガックリと肩を落とした隊長がさらりと口にした、直々に訓練をつけている、は鳥肌が立った。
あの、小柄な少年が?隊長の訓練を受けている上に飲み込みも早い、と。名だたるレスファイア家系ならばそれも当然だろうと言えるくらいに戦闘タイプだが、平民から急に貴族に周りを囲まれその上過酷な訓練を受けさせられるとは大変気の毒な話である。
「なぁ?ウチにも優秀な人材がもっと欲しいよなぁ」
悩ましげに溜め息をついている隊長であるが、これ以上優秀な人材とは誰のことを言うのだ。王城第一部隊とはその名の通り第一部隊。全てにおいて一位を誇れるのだ。そうでなければ基本入ることはできない大変優秀な集まりだ。
勿論、部隊の特徴として、統率と結果に重きを置くので、第二部隊のように自由や第三部隊のように過程を重要視することはあまりない。
とはいえ、ということなのだろうが。
「隣の芝生は青く見える、というところです隊長」
「………。ははっ、そうだよなぁ」
断然年上である隊長は時折少年のような可愛らしい笑みを見せることがある。そんなところに隊員は癒されるのだが、勿論抜かりなく鉄壁の警備員がやってくるのである。
「リース、何か楽しい話でも?」
「トルン。いやなに、ただの世間話だ」
「へえ?」
ギロリと睨まれ、ここは退散した方が良いと即座に判断する。
「では、失礼いたします」
一礼して部屋を出るまで鋭い視線が体に突き刺さっていた。
•*¨*•.¸¸☆*・゚
「トルン。相変わらずだな」
「当然のことだよ」
困った弟だ。勤務中はこちらに来るなといつも言っているのにも関わらず。
これでは公私混同もいい所だ。今更ではあるが、下の者に示しがつかない。
「前は、ピアに任せると言っていなかったか?」
「アイツは肝心な時にしか動かないじゃないか」
「肝心な時に動けばいいだろうに」
机に腰掛けているトルンを追い払おうと手を伸ばしたら、その手を取られて口付けられた。
「トルン」
「分かってるよ、オレだって。リアス」
意思表示。
公私混同はしないと、随分前に約束した。だいぶその線を越されている気がするが、最後にはきっちり後始末をするので良しとしている。
公的場面で互いの愛称は呼ばない。これも約束のひとつ。
「はぁ。早く隊舎に戻れ」
「あまり、他の奴らに笑顔見せないでよ」
「…………お前と一緒ならいいのか?」
「意地悪だな。時と場合による」
「ふん。お前のこれからの仕事ぶりに応じて褒美をやろうと思っていたんだが」
「………マフセフの仕事をオレがやれと?」
「異論は?」
「ご褒美くれる?」
「やると言っているだろう」
ニンマリと笑ったトルンが机から身を乗り出してきた。
「もちろん、オレの好きなもの?」
「……………家のことだから、公私中間の褒美だ」
「もう決まってるんだ?ならどうしようかなぁ」
「……………トルン」
「パーティーは4回。あとはオレとの蜜月」
「長すぎる」
「そう?シーズン後は忙しいだろう?」
「そうでなくてもするくせに」
「まあ、そうだね」
「いつもと変わらないじゃないか。そのために出席の回数を4回に減らすのは得策じゃない」
「じゃあ、全ての出席のあと服を脱がすのはオレっていうのは?」
「却下。翌日に響く」
「ケチ。じゃあ何?リアスは何をご褒美にしようとしているんですかねー?」
ぶーぶー、と面白くなさそうに唇を尖らすトルンは机から降りてオレを後ろから抱きしめた。
「休暇を取ろうかと………」
「一ヶ月!?」
「馬鹿!!二週間に決まってるだろ!!」
「いつも通りじゃん」
「二週間も席を開けられることに感謝しろ。そもそも長期休暇できる立場じゃないんだぞ」
「…………でも、もう恒例っぽくなってきたね?」
「何か違う案でも?」
「………子供欲しいなぁ」
「お前なぁ……オレを殺したいのか?………」
驚くことに子供が二十八人いる。自分でも、よく頑張ったと思う。でももともと子供を産める性ではないせいか、喉から血が止まらなくなったことがあった。ラビリス先生にこれ以上子供を作るのはやめた方がいいと言われた。それから約五年も立たずにこれか。
「まぁ、殺したいくらいに愛してるけど……子供に殺されるのは我慢ならないな」
相変わらずの狂愛っぷりだ。それが嫌ではないことが問題ではあるが。
「でも………キスしたい」
レスファイアの血筋尚且男の場合に子供を作る条件は、性別がわからなくなるくらい気持ちよくなることと、情熱的なキスだ。この条件が揃うと子供ができやすい。
とんでもなく気持ちいいのは言わずもがな。
子供を作らないようにするにはどうしてもそこにブレーキをかけなければならない。
だからオレはトルンに、情事の時、一番気持ちいい時に口にキスをするなと言った。
叱ったあとの子犬のようなしおらしいトルンはあの時ぐらいだったか。
「………オレもだよ」
「え?」
「お前だけかと思ったか?」
「…………………………。思ったよ……。いとも容易くキスするなって言うし……。ピロートークの時はどこか素っ気ないし。終わったらさっさと仕事戻っちゃうし」
一応甘えてたつもりだったのだが、足りなかっただろうか。
そもそもあんな激しくした後の甘い空気はどこか照れてしまってまともにトルンの顔が見れないし、終わったら仕事ということは仕事中にトルンが乱入してきたのであって相手をしただけ良いというもの。
それでも、こうも不安にさせてしまうのは不甲斐ない。
「心読めばいいだろ」
「それだと意味ないだろ」
「それをお前が言うか」
「だから、リースがあんまり読むなっていうから、読まないようにだな……」
「してたのか」
「そうだよ」
「そうか………そうか。偉いぞ」
椅子を回転させて、後ろにいるトルンをギュッと抱きしめて頭をわしゃわしゃと撫で回すと、キスされた。
「っ!?」
「っはぁ、好き」
じっと目を合わされて、かぁっと顔が熱くなる。
「っ、ば、馬鹿っ、仕事中だ……」
こういう対応だからトルンが不安になるのだろうか。たまにはトルンのリズムに合わせてやるのもいいのかもしれない。
トルンを引き寄せて、オレからもキスをする。
「………オレも、ルーが好き」
驚いた顔をしたトルンが珍しい。そういえば、こいつはこんな顔をしていたか。だいぶ逞しくなったように見える。毎日見ているのにおかしなものだ。
「それ………」
ぐっともう一度、キスされた。さらに深くなっていく。
「ん!?………んんっ!!」
隊服に手をかけられ、トルンを押し返そうとするが、それすら利用されて、脱がされる。
「っぷはっ、おいっんんんっ」
胸の突起をイジられ、体から、力が抜ける。
「っんうっ……」
「っはぁ、リース………抱くから……」
「やめろっ……仕事中だって……んっ!」
「好き……愛してる」
「おいっ、トルン!………あっ」
こうして今日も流された。好きで所構わずシているわけではない。オレは基本的に誰かに見られることを良しとしないのに、トルンはそうではない。
もう仕事中に好きだと言葉にしないと心に決めた。
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