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親戚周りと言っても、ミロ家は本当に数が少ない。ベストルド家が異常なのだとカメリア様はいう。
悪魔族四大貴族にはそれぞれ特徴があって、レスファイア家は純血。ベストルド家は淫魔。ミロ家は神魔。ランクル家は夢魔なのだそう。
淫魔と聞けば、子宝に恵まれるのは当然だと思う。
神魔といっても色々あるだろうに。聞けば本当に色々あるらしい。強い力を持つのが当たり前のように扱われるので、弱い者が生まれれば親族は頼りになくなる。より強い者は頼りにされる。
目に分かるような上下関係だ。
「大変ですね……」
「大変?………当然なんだよ。ここは実力主義なんだ」
実力主義。確かに、庶民から見ても貴族は殺伐とした関係性だと認識していた。本当に、厳しい世界だ。
「カメリア。可愛い子の顔を曇らせちゃダメなんだぞ」
ぷにっとカメリア様の頬に指を突いたリフラ様が、ニヤァっとした顔でカメリア様を見た。
「リフラ………」
「どうだ。オレが作ったドレス、いいだろう?」
カメリア様からよく見えるように前へ連れてこられ、カメリア様を見る。
「それが?」
「それがって……感想だよ、感想」
「いつもながらいい仕事だな」
「そういうことを聞いてんじゃないんだよオレは」
ムスッとするカメリアの服を引いたのはカーリス様だ。
「おっと、これは失礼、スアム殿」
僕の肩から手を離したリフラ様が、カーリス様を抱きしめる。
「まぁ、感想は後で聞くとして。ベストルド家の到着だ」
ざわめきが一層大きくなったのは、人数がいるからか、いやなに華々しい登場だ。
「あ、そうだ。リフラ」
「なに?」
「お前んとこの孫、確か高等部だよな?」
「そうだけど」
「スアムに一人御付が欲しくてな」
「・・・・。レスファイアを御付に?」
「スアムに御付だ」
「なにが目的で?」
「ミロ家の方が味方じゃないんでね。少々面倒なことになりそうだから、護衛目的で。情報収集が得意な奴がいい」
「ああ、なるほど。レスファイアは貸せないなあ。カロエがいるだろ?」
「御付って言ったろ」
「そっちで欲しいのかあ。オレんとこよりフブキ兄様かカロニカのとこの方がいいだろ」
「・・・・・」
「こうして人脈を広げんだよ。お前の名義だ。悪いようにはならないだろ」
「分かった」
「スアム。お前のことになるとカメリアはこうも素直なんだぜ?愛されてるよなあ」
「リフラ様も、カーリス様のことを大事にしてるの、分かりますよ。誰にも触れさせないようにしてるし話しかけられないようにしてますよね?」
言うと、スッとリフラ様の周りの空気が変わった。
「へえ?面白いこと言うね。まあ、当然といえば当然のことだけどな。逆にカメリアはスアムのことを野放しにし過ぎなような気がするんだけど?これには何か理由が?」
「自分の身は自分で守れ」
「なるほど。そういうことか。でも海水浴で倒れたって聞いたけど」
「クレスが二度はないといったからな」
「なるほど。それは安全牌だ。良くも悪くも」
考え込むようにしたカメリア様はリフラ様と別れて、フローラ様のところに来た。
フローラ様は王城御用達の生花取扱店を経営しているそうで、今回はスタッフながらもちゃんと舞踏会に参加している。
相変わらずの美人は前にドギマギしてしまう。
「フローラ」
「カメリア様。ご機嫌麗しゅうございます」
「ああ、少し相談なんだが。お前の孫に高等部生がいるだろう?」
「はい四人ほど」
「そのうちの一人をスアムの御付にしたい」
「…貴方様のことですから、なんの考えもないということはないのでしょう。そうですね、数日いただいても?」
「今日中だ」
それを聞いて僕も驚いた。
「急…過ぎ、では?」
「事は急がなければならない」
「分かりました。少々お待ちください。付き人ならば本人の意思も必要ですから」
「ああ。ダンスが終わる頃に返事を聞こう」
「承知いたしました」
一礼したフローラ様はカロニカ様の方へ向かって行った。
ひと段落とでもいうように、ウェーターを呼んで二つグラスを手に取った。そのうちのひとつを僕に渡した。
スンと嗅げば、ジンジャーの匂いがした。ジンジャーエールだ。
「そっちはなんですか?」
「大人の飲み物」
「意地悪な言い方ですね」
「そう、むくれるな」
スッと耳元に唇を寄せたカメリア様は、囁くように言った。
「すぐにこの味にも慣れるだろう」
「っ、カメリア様、囁く必要はないのでは?」
「お前のその赤い顏が見たいんだよ」
「意地悪ですね。僕は見せたくありません」
「オレが見たいなら見せないという選択肢はない」
「横暴」
「どうとでも」
「悪魔!」
「悪魔だな」
「もうっ、カメリア様なんて知らない」
言うといきなりぐいっと抱き寄せられた。危うくグラスの中身が零れるところだった。
「それは困るな。どうしたら機嫌を直してくれる?」
「それ、飲ませて下さい」
「・・・・ダンスの後でだな」
「今でいいです」
「オレが・・・困る」
「なんでですか」
「みっともないダンスを踊ったらミロ家に泥を塗るのと同じだ」
「それは確かにダメですね。分かりました。ダンスの後に飲ませていただきます」
「そう。それがいい」
お酒を飲むのは初めてかもしれない。楽しみを後でとっておくというのはなんとも心弾むものだ。
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