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中学の俺とあなた 影山side
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「…………」
「…………? ん? なんだよ?
何ジロジロ見てんだよ?」
「えっ! いや~別になんもねぇ~よ」
「???」
朝になればいつもの朝練が始まる。
体育館に入ってボール出しをしていると、後ろから視線を感じる。
振り向けば、金田一が無言でこっちを見ていた。
用があるなら言えばいーのに。
「昨日の帰り、どうだったのか聞きたいんだよ。金田一は……」
いつもの眠そうな目で隣に寄ってくる国見に、金田一は困り顔で頷いた。
どうだったって……
「俺、昨日どうやって帰ったのかわかんねぇーんだけど……
目が覚めたら自分のベッドで寝てたし。
お前らが送ってくれたのか?」
「……ずっと寝てたってことか……」
「もったいない奴……」
何故か二人が呆れた顔でため息吐くのに、首を傾げるしか出来ない。
「途中で目覚めろよ」
「感謝してほしいぐらいのことしたのに、まさかずっと寝てるとはな……
ホントもったいない」
「感謝?」
「あ~~そんなことより及川さん来たぞ。行かなくていいのか?」
金田一の目線の先を見ると、及川さんがにこやかに周りに挨拶しながら体育館に入ってくるのが目に留まった。
俺も挨拶しとかないと。
及川さんに駆け足で近づく。
「及川さん、ハザマス」
いつも俺が近づいただけで顔しかめるのに、今日の及川さんは優しい笑みを浮かべて、
そして……
「おはよ、飛雄」
と、俺の名前を呼んだ。
思わず目を見開き、耳を疑った
今まで名前で呼ばれたことないのに、何故?
聞き間違え?
だって及川さん俺のこと嫌ってたのに、名前で呼ぶなんて……
「え? 飛雄?
あ、あの……及川さん、飛雄って……?」
「なんなの? お前の名前飛雄じゃないの?」
「いや、飛雄っすけど……」
「そーでしょ、飛雄だろ?
だったら飛雄って呼んでも良いでしょ?」
「え?」
「何? ダメなの?」
ダメじゃない! ダメなわけない!!
突然なんで名前呼びにしようと思ったのか分からないけど、でも
ヤバイ
スゲー嬉しい!
「い、いや! 飛雄で良いです!
飛雄って呼んでください!」
「そ? じゃあ、飛雄」
「ハイ!」
飛雄って、親にいつも呼ばれてて、
呼ばれなれてると思ってたけど……
まさかこんなに
及川さんに呼ばれたってだけで、こんなにも嬉しくて
すごい特別な響き
なんか自分の名前じゃないみたいだ。
それに……
久しぶりに見た……及川さんの笑顔
前はよく見せてくれていたあの笑顔を今、俺に向けてくれている
また、サーブ教えてくれますか?
俺にもっと笑顔を見せてくれますか?
前みたいに戻りたいです……
「あ、あのじゃあ及川さん、サー──……」
「嫌だねバーカ!」
「ムゥ……」
やっぱりそれはダメみたいだ。
なんだよ……少し近づけたと思ったのに
「なんなんすか及川さん……機嫌良いのかと思ったら、またそんな意地悪言って……
もういいっす!
勝手に見ときますから、どーぞ練習してください!」
「いや、気が散るから見ないでよ」
「俺のことは気にせずどーぞ!」
「メチャクチャ気になるんだけど……」
サーブはダメだったけど、それでも及川さんはにこやかな顔をしていた。
あんなに嫌われてたのに……また笑顔を見せてくれるなんて。
本当に、スゲー嬉しい……
「何があったか知らねーけど、あの及川さんがお前を名前で呼ぶなんてな。
良かったな影山!」
練習する及川さんを見つめていると、金田一達が近付いてきて肩を叩いてくる。
「岩泉さんでさえ名前じゃないのに影山だけ名前呼びとか、なんか特別って感じだな」
上がっていく口角を元に戻すことが出来ない。
少しは近付けたのかな?
俺は、好きな人の、
及川さんの特別になれたのかな……
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