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中学の俺とあなた 影山side
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彼女が出来たならこの想い、諦めないといけねーよな……
それで及川さんが幸せなら
俺が近付いたら嫌な顔するなら、やっぱり俺はあなたを諦めないといけないんだと思う。
でも……瞳に映った彼は……
暗い表情をしていて、お世辞にも幸せそうには見えなかった。
「あの、及川さん……サーブ、教えてください……」
「……嫌だねバーーカ。
こっち来んな、あっち行けよ」
やっぱり元気なくて……
俺の顔を見た途端、悲しそうに顔を歪めて、すぐに視線を逸らした。
前までの及川さんだったら、俺が近付くと眉間にシワを寄せて、あからさまに不機嫌そうな顔をしていたのに。
怒った顔されたらスゲー悲しかったけど、辛そうで泣きそうな顔より全然ましだ。
どうしてそんな顔してるんだろ……?
彼女の末岡さんが傍に居たら、笑顔になるんだろうか?
俺が及川さんを笑顔にしてあげたいって思ってたけど……俺じゃあダメみたいだから。
末岡さんが及川さんを笑顔にしてくれるなら……
悲しいけど、及川さんのこと
まだ、好きだけど……
……及川さんの幸せが一番だから……
俺のこの気持ち、想いは……消さないといけないんだな……
そう思っても
無意識に校内をさ迷って、彼のことを探してしまっている自分がいた。
午後練終了後、いつもみたいに残って、サーブ練すると思っていた及川さんが、今日は早々と体育館を後にしていた。
きっと末岡さんと一緒に帰るのだろう。
そう思ったけど、胸がモヤモヤモヤモヤグワァーッてなって、練習に集中出来なくなった……
気がついたら勝手に足が、体育館の外へと動いてしまっていた。
見つけた及川さんは、虚ろな表情で数人の女子達に引っ張られていた。
「やっとOKしてくれたぁ~」
「ずっと及川くんとカラオケ行きたかったんだよねぇ~」
え? あの人達とカラオケに行くのか?
末岡さんは?
それに、行ったことないから分からないけど、カラオケって楽しいところなんじゃないのか?
なのに何故彼は、あんなにも悲しそうな顔をしてるんだ……?
茫然と校門を通り抜けて行く及川さん達を見つめていると、後ろから自分の名前が聞こえてきた。
「とび、お…………」
学校で俺のことを下の名前で呼ぶのは……及川さんしか、いない……
その、はずなんだ……あの人しか……
そう意識するだけで、上昇していく体温
でも及川さんはさっき学校から出て行ったよな?
なのに、どうして?
慌てて振り返ったその先に居たのは、
困ったような表情で末岡さんがこちらを見つめていた。
「えっ! す、末岡さん!?
なんだよ突然下の名前なんかで呼んで?」
「……とびおってやっぱり影山くんだよね……」
「そー、だけど……それが何?」
首を傾げると、末岡さんが悲しそうな顔をして、俺から目線を逸らした。
「及川先輩が私の顔を見た途端、何故かとびおって呟いたの」
「えっ!? な、なんで?」
及川さんが俺の名前を呟いた……?
心臓がドクドクと騒ぎ出す。
「用事思い出したから先帰ってって……言われて……
影山くんに何か用があるのかなって思って。
私と帰る約束したのに、影山くんを優先するんだって思ったら、なんか悲しくて……」
「…………」
「及川先輩と一緒じゃないの?」
「え、いや……及川さんはさっき、女子達と一緒にカラオケ行くって……」
そう言った瞬間末岡さんの瞳が潤みだして、慌てて口をつぐんだ。
彼女に言うことじゃなかったと、今更ながらに後悔した。
でも……俺だってショックだった……
及川さんは俺の名前を呼んでくれたのに、でも女子達と一緒に行ってしまった。
何故呼んだんだ?
そんな期待させて、あっさりと落とすなんて……
「私じゃ、ダメだったのかな……
他の女の子の方が良かったのかな……」
女の子の方が良かった……
今、末岡さんと同じこと考えてた。
末岡さんは俺と一緒なのかもしれない。
好きな人に、選ばれなかった……
涙を流し俯いた末岡さんが、どんどん滲んでいく。
あぁ……俺、泣いてるんだ……
なぁ及川さん……どうして
どうして俺の名前を呟いたんですか?
教えて下さい 及川さん……
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