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中学の俺とあなた 影山side
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「影山、こんなとこで何してんだよ?」
朝練
体育館に入ることが出来ずに、扉の影に隠れて中の様子を窺っていた俺の肩を、誰かが後ろから叩いてきた。
それに驚きながらも慌てて振り返ると、そこには
眠たそうな顔の国見と、不思議そうに首を傾げる金田一の姿があった。
「入んないのか?」
「あ……は、入るよ……」
そう返事しながらも、体育館へと踏み入ることが出来ない。
だって……中にはもう及川さんが居る、岩泉さんと一緒に練習を始めている。
いつもみたいに傍に行きたいけど……
昨日の及川さんは、とても冷たかった。
近付いてまた嫌そうに顔を歪められたらどうしよう……そう思ったら悲しくて涙が出そうになった。
「影山……及川さんと何かあったの?」
及川さんを真っ直ぐ見つめて、溢れそうになる涙をグッと堪えていると、国見が心配そうな顔で鋭い質問をしてきた。
「な、なんで!?」
「なんで分かるのかって?
だってお前いっつも、及川さん及川さんって、暇さえあれば及川さんって言ってるし。
どーせ今も及川さんのこと考えてるんだろーなって思って。
当たりだろ?」
「俺ってそんなに及川さん及川さんって言ってるか?」
「言ってんだろ。それに顔見てたら分かる」
「か、顔?」
「顔に及川さんって書いてあるから」
「確かにな……」
金田一までもが俺の顔を見ながら、納得したと言わんばかりに何度も頷いた。
思わず自分の顔をペタペタと触って、本当に書いてあるのかと確かめてしまう。
そんな俺に、金田一が困り顔で笑ってきた。
「バカ。本当に書いてるわけねーだろ。
つーか、確かめるってことはやっぱり図星か……
何があったかは知らねーけど、でもいつまでもそんなとこに居るわけにはいかねーだろ……」
確かに、金田一の言う通りだ。
このままこんなところにずっといても練習だって出来ないし、監督に怒られてしまうかもしれない。
俺は頷いて中の様子を窺いながら、恐る恐る体育館の中に入った。
そこでちょうど、及川さんがトスを上げる姿が視界に映った。
それを打ち、スパイクを決める岩泉さん。
「岩ちゃんナイス!」
嬉しそうに笑う及川さんを見ていたら、胸をギュッと掴まれたような感覚が俺を襲ってきた。
及川さんいつも通り笑ってる……
近付きたい、一緒に練習したい。
でもまたあの嫌そうな顔されたらどうする?
俺はもう……
及川さんに話しかけたらいけないのだろーか?
もう近寄ることも、話しかけることも出来ないのか?
許されないのか……
そんなの苦しい……嫌だ
「俺、及川さんに嫌われたんだ」
「え?」
「嫌われた? なんで?」
前まで及川さんは優しく教えてくれてたんだ。
それは金田一達も知っている。
だからだろう。嫌われたという言葉に二人は、不思議そうに首をかしげている。
俺だって不思議で堪らない。
「なんでなんてこっちが知りてーよ!
突然バカとか言われて、俺なんかと仲良くないって……
なんで嫌われたのかは分かんねーけど、それでも及川さんにまた教えてもらいたい……
及川さんの傍に居たい。
でもやっぱり嫌われたし、もう近付いちゃダメなのかな……?」
及川さんを見つめたまま強く拳を握って、唇を噛み締める。
そんな俺の肩に、国見が優しく手を添えた。
「影山は本当に及川さんのことが好きなんだな」
否定が出来ず、その好きって言葉にみるみる顔が熱くなっていく。
「だってさ、傍にいたい、近付きたいって思うこと=好きなんじゃない?
仲良くないって言われてすごいショックうけてるみたいだけど、それってやっぱり好きだからだろ?
どーでもいいヤツにそんなこと言われても、そこまで落ち込んだり、隠れたりなんてしないだろ?」
これも否定なんて出来なくて……
俺は及川さんに近付きたいし、笑いかけてほしい。
それって好きだからそう思ってしまう。
そう言うこと……なのか
思わず考え込んでいると、金田一が乱暴に背中を押してきた。
前のめりになりながらなんとか体勢を立て直して、金田一を睨み付けた。
「何すんだよ!?」
「うるせー! 好きなら逃げてないでぶつかっていかねーと、気持ち伝わらねーぞ!!」
「でも俺嫌われてるし……」
「及川さんは嫌ってても影山は好きなんだろ?
じゃあ好きになってもらえるように、アタックし続けるしかねーだろ?
相手が先輩だからって、そこは遠慮しなくていーんだよ」
「そーだな。恋愛に上下関係無いしな。
好きになってもらえるように、頑張ってみれば?
それに……」
国見がニヤリと笑って、チラリと及川さんの方を見る。
「及川さんも影山のこと好きだと思うし」
「は、はぁ!? 及川さんが俺のこと好きなわけないだろ。
好きならバカとか言わねーだろ!」
「でも今まで影山に優しかったわけだし。
それに及川さんの顔見てたら分かるんだよ」
「ま、また顔かよ!
見てたら分かるって、なんで分かるんだよ!」
「だって、好きって書いてあるから」
「やっぱり書いてあるのか??」
「もちろんお前の顔にもまだ書いてあるぞ」
俺はまた自分の顔をペタペタ触りながら、及川さんの顔にも書いてあるのかと、ジーっと彼の顔も観察してみる。
そんな俺の頭を金田一が叩いてきた。
「バカ! だから本当に書いてあるわけねーだろ!
表情とか、仕草とかで分かるってことだよ。
まあ、とにかく本気で好きなら、簡単に諦めるなよ!
もう少し頑張ってみてもいーんじゃねーか?」
「諦める必要もないしな。
だって好きって書いてあるわけだし」
「またそれかよ……」
「俺には見えるんだよ。
金田一の顔にも何て書いてあるのか見えるぞ」
「えっ! な、何て書いてあるんだ?!」
「それはな……」
「あぁーーーーーー! 言わなくていい!!」
金田一が慌てて国見の口を手で塞ごうとする。
それをヒラリヒラリとかわしていく国見。
「俺が見えるお陰で助かったことがいっぱいあるだろ金田一?
いっつも口下手なお前の言いたいことに気付いて、色々当ててやってんだから、感謝しろよ」
「当てなくていい!
それ以上何も言うな! 言ったら怒るぞ!!」
「怒れば? お前怖くないし」
頭から今にも煙を出しそうぐらい、顔を真っ赤にする金田一。
それでも国見は、余裕そうな表情で俺の方を見てきた。
「まあ、そー言うことだから。
とにかく、諦めずに頑張ってみたら、良いことあるかもしれないぞ。
金田一みたいに」
「国見!!」
そー言うことってどーいうことだよ?
なんで金田一がそんなに焦ってんのか知らねーけど、でも……
嫌われてても俺が頑張れば、及川さんまた笑ってくれるようになるかな?
また及川さんに笑いかけてほしい……傍にいたい
顔に書いてあるとか全然意味分かんねーし、もしかしたら及川さんが俺を好きって言うのは、ただ国見が俺を励まそうとしているだけなのかもしれないけど。
それでも及川さんが少しでも俺のこと好きになってくれる可能性があるのなら……
「俺、もう少し頑張ってみるよ。
二人ともサンキューな……」
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