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中学の俺とあなた 影山side
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手の中で人の気持ちが壊されて。
皺が寄った手紙を呆然と見つめて、悲しくもそんなことを思った。
まるでこれは他人のではなく、自分の心を現している……
そんな気がして止まない。
「どうしよう、これ……」
胸が苦しくなる感覚に襲われて、慌てて皺を伸ばそうと手紙を左右に引っ張った。
どうしよう、どうしたらいいんだ?
頭中を困惑が渦巻く。
元通りになれ!
その願いは無意味だと言うことは分かり切ってるはずなのに、何度も心中で祈る。
その時、絶対聴きたくなかった、ビリっと紙が破ける音が現実の中で響く。
「あっ!」
『やっぱり、何もかも無意味だったね……』
誰かが、哀れさを含んだ声でそう囁きかけてきた気がした。
この声は心の中にだけ存在している、及川さんの声だったのかもしれない。
こんなに引っ張ったら破けるに決まってるのに、バカでした、俺……
これでも、そのまま及川さんに渡す?
俺には決して向けられることのない、彼の笑顔が浮かぶ。
いや、それだけはしたくない……
じゃあ、末岡さんに返す?
きっと彼女はこれを見たら、激怒するだろう。
当たり前だ。
自分の気持ちを伝えようと、一生懸命書いたものを踏みにじられたことを知ったら、
怒らないわけがない。
及川さんに渡したくない。
末岡さんに返す勇気もない。
「じゃあ、俺はどうすればいーんだよ……クソッ」
吐き捨てて俯いたその時、体育館の方から複数の騒がしい声が響いてきた。
思わず慌てて隅の方へ隠れる。
チームメイト達がゾロゾロと体育館から出てくる姿が見え、ため息をついた。
部活終わったのか……
「あーあ……完全にサボったことになるなこれ……
先輩達に何か言われるかもしれねーな……」
そう思った俺は、皆が帰るまでしばらく隠れておくことにした。
制服に着替えた部員達が、校門へと歩いていく姿をしっかり見送り、小走りで部室へ向かう。
「見つからなくて良かった……」
そう呟いて部室のドアノブに手をかけたが、中の方からまだ声が聞こえてきて手を離す。
ヤベェ……まだ居たのか……
またため息を吐いて隠れると、中から金田一と国見が出てきた。
電気を消したから、あいつらが最後なのだろう。
なんだ……先輩じゃねーなら普通に入れば良かった……
「ねぇ、金田一……」
「ん? なんだ?」
「もう皆帰ったかな?」
「さぁ? もう帰ったかもな……」
スマン……まだ帰ってねぇー奴が一人います……
「どうした?」
「あのさ……久しぶりに手繋いで帰らねぇ?」
「えっ!」
えっ! 思わず俺も金田一と同じ声を出しそうになって、慌てて口をつぐむ。
「いやでもさ、誰かがまだ残ってるかもしれねーし、それはちょっとまずいだろ……」
「何? 金田一は俺と手を繋ぎたくないの?」
「バッ! そんなこと言ってねぇーだろ!
ただ、誰かに見られたらヤバイって言っただけで」
「金田一は俺とのことが、バレたらヤバイんだ?
恥ずかしいんだな……」
「な、何言ってんだよバカっ! そんなわけねーだろ!!
お前とのことに恥ずかしいことなんてなんもあるわけねーだろ!」
「本当に? じゃあ手、繋ぐだろ?」
「当たり前だ!」
金田一が声を大にして、国見の手を勢いよく握る。
そんな金田一に国見が小さく笑う声がした。
「顔赤いけど、照れてんのか?」
「暗いのに赤いとか分かるわけねーだろ! 適当言うな」
「ふ~ん。適当ねぇ~……
じゃあちゃんとこっち向いてみろよ。
適当かどうか確かめさせろよ」
「え? わっ!」
そう言った国見が金田一の腕を引っ張ったかと思えば、次の瞬間にはもう二人の唇と唇がくっついている状態になっていた。
こ、これって、き、キスしてんのか!?
な、なんであの二人が手を繋いでキスしてるんだ??
「く、国見! 何やって!」
「ホラ、やっぱり照れてんだろ? 顔真っ赤じゃん」
「そ、それはお前が突然キスするから!」
「嫌だった?」
「嫌じゃねーけど」
「じゃあ、もう一回しようよ」
そう国見が言ったと同時に金田一が国見へと唇を近付け、またキスをする……
「仕返しだ!」
「ハハ、金田一のくせに」
二人は楽しそうに笑いあった後、仲良く手を繋いで帰っていった。
え? え? ええぇ?
俺の頭の中は混乱しっぱなしだった。
手を繋いでキスする?
なんで? 二人はどういう関係なんだろうか??
つまりこれってよく分かんねーけど、二人は恋人同士ってことなのか?
そう…だったのか。
スゲービックリした……
なんか二人、とても楽しそうだったな……
いいな
羨ましいと思った。
及川さんの顔が浮かんでくる。
俺も及川さんと……手を繋いで、キスしたい。
頬が熱くなるのを感じながら、そんなことを思った……
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