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観覧車をもう一度
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ぎゅっと抱きしめて唇に吸い付き、コートを開け、お尻を撫で回す。
タイトめのズボンにねじ込むように手を差し込み、熱を帯びた丸い肉を指先で味わい、谷間に指を沿わせる。
……前回は外で無理やりに乱暴して、今回も自制出来ずにトイレで犯すとか、俺は本当にクズじゃないか?
だけど、身体の芯のところで、ぐちゃぐちゃどろどろと欲望が熱く煮えたぎってしまう。もう自分じゃなくなる。
はとちゃんに、狂わされてる。
……せめて今回は、傷付けたりしたくない。
性急に犯したくてたまらないのをこらえて、ひくつく穴を指の腹で触れ、もう裂けてしまわないか、ちゃんと治ったかな、と丹念に確かめていく。
「ん、っ……」
「痛くない? 指、中に挿れるよ」
「うん……しゅうとさん、ぼくも……さわりたい……」
そう言って、布を押し上げ張り詰めた尖りに触れる。ベルトをおぼつかない手付きでゆるめ、露わになったそれをそっと優しい手つきでさすり上げる。
個室トイレの狭い空間の中で身体を寄せ合い、お互いの湿った吐息が甘く響く。外からは時々、人の声や足音が聞こえてくる。幸運な事に、他にトイレを使う者はない。
「……最初から準備万端なんて、案外やる気だったんだね、はとちゃん?」
穴をまさぐる指の本数を増やす。思ったよりもすんなりとそれを受け入れる。中は熱を帯びて、指が気持ちいい。
照れたように視線をさまよわせながら、はとちゃんは言葉を漏らす。
「あ、う、あの、お、お薬、おしりにぬってたの、そしたら、なんか、どんどん……しゅうとさんに、さわってほしくなっちゃったの……」
自分で触って慰めるのが、癖になってしまったのか? 気持ちよくなったら駄目、なんて言ってた子が、こんなにいやらしくなって。
はとちゃんのズボンをずり下ろす。下着は女性ものだ。露わになったそれはもう膨らんでいる。身体の中心だけを露出している様は、背徳感を煽る。
「もう……はとちゃんがやらしすぎて、俺どうにかなっちゃいそう……」
慌てて全身のポケットを探り、幸運にもコートからコンドームが発見され、俺は封を歯で切る。
「あ、それ、ぼくにつけて。せっかくしゅうとさんがくれたふくだもん、よごしたくない……」
それもそうか、ともう1つ有るか探したが、見つからない。ならば、とバッグを開くが、
ローションしかない。
……本当にクズだな! 確かに最近、中出ししかしてなかったけどさ!
こんな、すぐ洗えない状況で中出しなんかしたら腹下すし、この後そのまま出歩かせるのが忍びないし。
いや、洋式トイレならウォシュレットですぐ洗えば、と便座を見たが、そんな機能ついてないただの便器だった。ちくしょう。
「……しゅうとさん、中にだすの好きなんでしょ? いいよぉ、大丈夫だよぉ」
なんの根拠もなく大丈夫だなんて言わないで欲しいのだが、はとちゃんは壁に手をついて、コートを脱いでお尻をこちらに向けて誘っている。
俺はバキバキになった自分自身にゴムを被せて、はとちゃんの身体を引っ張り、便器の前に立たせる。
「服の前のとこめくって、便器に向かって出しな。後ろから、挿れるから」
言いながらローションをたっぷりと穴の中に注ぐ。ろくにあたためてないからか、はとちゃんは刺激にひくひくと穴を縮めている。
「ひ、あ……」
「すぐに温めて、良くしてあげるから」
もっともっとじっとり慣らしてあげたいが、人が来るとまずい。それにこっちはいい加減暴発してしまいそうだ。
穴に当てがって挿れていく。吸い付くように飲み込まれ、腰を揺らすと深くへと引きずり込まれるみたいだ。
突くたびにきゅうと根元が締まり、白い尻肉が腹に押し付けられる。もっと、もっとと腰付きが淫らにねだっている。
両手で服のすそを持ち上げている分、お腹はがら空きだ。腹の傷を指で擦り上げると、必死に我慢していた声が漏れる。
「んうぅっ……おなか、だめぇ……♡」
「お尻こんなに俺に擦り付けて、すっかり俺に発情する身体になったね……?」
身体を支えるように腕を回し、耳元で小声でささやきかける。絶えず絡みついてくる穴の中が、びく、と痙攣する。
「あっ、うあ、あ、だめ……ぼく、も、もう、しゅうとさんなしじゃ、だめなの……」
自覚は無いだろうに、どうしてそう甘えるように煽ってくるんだよ、はとちゃん。
愛おしくて、胸をかきむしられるみたいだ。
マフラーを引っ張り下げて、うっすら汗ばんだ首筋を舌で舐め、たまらなくなってうなじに噛み付く。
「ふあ♡ や、あ♡」
華奢な首元に歯型が残り、口の中がかすかに甘じょっぱい。何度も口付けては首を噛み、顎を揺らして感じているはとちゃんの耳たぶに吸い付く。唾液が溢れて止まらない、夢中でむしゃぶりつき、腰をぶつける。前屈していく小さな身体を、離すまいと強く抱きしめる。
「……食べちゃいたい……ッ」
奥を抉られるたびにぽた、ぱたたっ、とはとちゃんは精液をこぼす。便器の中に溜まった水の中に落ちるものもあれば、勢いよく液を飛ばしてしまいもする。
もう我慢のしようがないのか、はとちゃんは淫らに息を荒げて、身体を震わせる。
「あ♡ ああっ♡ た、たべてぇ……っ♡ ぜんぶあげる……すき、好きぃ……っ♡」
「く、可愛いなあ、もう、ああ、イク、出る……っ、う」
身体を手繰り寄せ、射精した。
とほぼ同時に、背後で足音と水音が聞こえて、ハッとする。
いつから居た? 今か? 聞かれた?
焦って思わずはとちゃんの口を手で覆うと、濡れた唇が噛んだお返しとばかりに手のひらに吸い付いて、優しく前歯が肉を挟んだ。まるで小動物に甘えられてるみたいだ。
少し不規則に、鼻から吐息が手に何度もかかる。4本の指でとん、とんと柔らかくほおに触れてやると、手の中で口元が笑ったみたいだった。
抜かずにじっと動かず、人が居なくなるまで抱きしめあった。
はとちゃんはホットココア、俺はコーヒーを売店で買って、ベンチに腰掛けた。
いつもどことなくゆるっとした無防備な顔をしているけれど、した後は輪をかけて幸せそうに微笑む。まるで、何もかも許されているみたいに。
和むけれど、和むだけでいいのか?
ちくちくと、胸が内側から痛む。
「……腰とか、痛まない?」
「大丈夫だよ。しゅうとさんも、もう大丈夫?」
「ああ、うん……あの、はとちゃん……か、観覧車、乗らない……? 2人きりで、話したいことが、あるんだ」
指差した先でゆっくり回る観覧車を、はとちゃんは見上げた。
「かんらんしゃかあ……いいよ。ん、でも、今おしゃべりしてて、今はおしゃべりできないことなの? ひみつなの?」
この場で話してるのに話せない内緒話か、って聞いてるのかな?
「そう、秘密……俺の秘密、聞いてくれる?」
「しゅうとさんにも、ひみつ、あるんだねえ。うん、ききたい。ないしょにするよお、ゆびきり、ゆびきり」
はとちゃんが差し出した小指を絡めようとして、気が咎めて、そっと手を包んだ。
不思議そうに首をかしげて、はとちゃんは俺を見上げた。
観覧車に入って、はとちゃんの向かいに座ったのに、はとちゃんはすぐに俺の隣にニコニコしながら寄ってきて座った。ほんの少し傾斜して、円を描くゴンドラは上へとのぼっていく。地表が遠ざかる。
高さのせいじゃなく、背筋が震える。
「……俺ね、はとちゃんのこと、ずっと騙してたんだ」
意味がわからない、という表情で丸い瞳がぱちぱちと閉じる。膝の上できつく握りしめて震えるこぶしに、はとちゃんが気が付いてえっ、えっ、と戸惑いの声を上げる。
「はとちゃんと初めて逢ったとき……はとちゃん倒れてたでしょ? 痴漢されて……」
「うん」
「あれ……俺なんだ。俺が……痴漢なんだ。手、出したんだ。ごめん……ごめん……」
視界が潤むのを感じて、なんで加害者の俺が泣きそうになってんだよ、怖い、はとちゃんに見限られるのが怖い、まとまらない思考のままはとちゃんを見ると、相変わらず不思議そうな顔をしている。
あれ、もしかして意味が伝わらなかったのか、ど、どうしたら。
「……なんで、ぼくにさわったの?」
責めるような声色じゃなく、ただ疑問だから、というような率直な問いに、どぎまぎしてしまう。
「え、あ、は、はとちゃんが、可愛くて、触れるものなら触りたくなって……」
はとちゃんは、なんだか切なくなるような微笑みを浮かべて、震える俺の握りこぶしに手を重ねた。
慈愛に満ちた天使の幻が見えた。
「……そっかあ。うん、ぼくでよかった。女の子だったら、きっと、もっとこわくて、いやだった。ぼくで、よかった」
それは、彼らしい理解と言えた。
もう女の子を苦しませたくない、という彼の生きる指針が、
女の子が被害者にならなくてよかった、
僕が痛みを引き受けられてよかった、
という意味だと伝えていた。
「ぼくねえ、じぶんのかお、いやだったの。このかおなら、さいしょから、女の子に生まれてたら、きっとみんな、しあわせだった。お父さんも、お母さんも……あの子も……。だから、女の子のかっこうをして……こわい思いをたくさんしても……ばつなんだ、って」
女装で、怖い思い?
……たくさん?
俺だけじゃなく、過去にも……何か、あったのか?
そんな、もしかして、
……乱暴されたりもした、のか?
ありうる話だ、こんな可愛くて、抵抗出来なさそうで、その上病気だし、ああクソ最初っからそうだったじゃないか。
俺自身が感じたんだ、この子はどうみても、カモだって!
「でも、お父さんと、お母さんに、かんしゃしなきゃ。だって……しゅうとさんが好きなかおに、生んでもらった。しゅうとさんが、さわってくれた。……こんな、やさしい、大好きな人に、あえた。ねえ、さわりたくなったら、ぼくを、さわって。もう、しちゃだめだよ。……泣かないで、大丈夫だよ。えへへ、じゃあぼくもいっぱい、しゅうとさんに、さわるから。ね?」
俺をそっと抱きしめて、背中をゆっくりと撫でる。震えが止まり、ほおを涙が滑る。
人が神様を求めるのは、この世界に理不尽な事が多過ぎるからだ。
馬鹿でかい地震とか、事件や事故、生まれや育ちのせいで、なんの落ち度もないのに不幸に見舞われてしまう。そんなときに宗教は、それらしい理由を上から被せて、受け入れがたい仕打ちを運命や試練として解釈を促す。
……はとちゃんはきっと、あまりに理不尽な目に遭い過ぎた。
罪に濡れて苦しみ抜いた果てに、悲しむのも怒るのも通り過ぎて、ただ受け容れる天使の境地に至ってしまった。俺のやったことを、まるでロマンチックな運命の出逢いみたいに、都合よく思い込む。
許されなかったら、嫌われたら、と怯えていたのに、今ではもっと、恐ろしい。
どうやったら俺は、この悲しい優しさに応えられる?
眼鏡が外されて、ぼやけきった視界の中で、はとちゃんは俺にそおっと口付けた。
服の裾を伸ばして、ほおを乾かそうとふわふわと触れてくれる。
「……泣きやむお薬、のむ……?」
「大丈夫……ありがとう、俺は……はとちゃんにふさわしい男になれるように、頑張るね……ありがとう、本当に、ありがとう」
最低な出逢いを、あなたにとって最高の出逢いに、どうか出来ますように。
抱きしめあっていたら、いつの間にか観覧車は一周していた。
「……しゅうとさんばっかり見て、お外見るの、わすれちゃったあ」
「俺も……外見る余裕とか無かった……」
「もっかい、のろう? それでね、いちばんたかいところで、ちゅーするの」
2度目の観覧車は、手を繋いで外を見て、あそこがさっき見たヒーローショーのところだよとか、なんか屋外ライブがやってて人だかりあるよとか言い合った。
てっぺんで深く長くキスを交わして、それにしても観覧車に続けて乗るとか、最高にバカップルだな俺たち、とか思った。
翌日の真夜中、電話の音で起こされた。
目を細めて、携帯の画面に表示された相手がはとちゃんだと分かったら、なにか恐ろしい予感で心臓が跳ねた。
「も、もしもし……」
呼吸音のようなものが聞こえる。
「遅い時間にどした? 眠れない? おしゃべり、する?あ、管理人さんに怒られるかもだから、小声でしよっか」
「…………夜分遅くにすみません、総管理人の大坪義一と申します」
返答したのは、かなり低い声の男だった。この人が、例の「おおつぼさん」か?
「えっと……突然の話で恐縮ですが、うちに……昭知くんの暮らしてる『あまるていあ』に来て、お話を伺えたらと思うのですが。出来るだけ、早くに」
「な、何か……あったんですか? 夜中にどうして、また」
「……昭知くんが、あなたが贈った花の入った箱と、お年玉を盗まれて……不穏で」
「ぬ、盗まれた、って……!? 誰が、どういう、はとちゃんは大丈夫なんですか!?」
「嘔吐がありましたが、マッサージで落ち着いて、ようやく薬を飲み込めた、ってところです。……ずっと首元を触ってます。あなたがつけた、歯型のところを」
「……!」
ちょっと待て、それは、
「徳永刑事からあなたと昭知くんの関係については耳に入っていますし……さっき、昭知くんが気が動転して色々話していました。彼、泣くと口が滑るタイプですので」
自分の凄惨な過去を、泣きながら話していた姿が思い起こされる。
う、嘘だろ。いつかはバレると思ってた、話さなきゃとは思ってたけど、そんな、前からずっと分かってたのかよ……!
冷や汗がドバッと出てくる。どうなってる。どうなってんだ。
「お年玉の方は既にほぼ全額使われて、戻せるかは未知数ですが、お花の方は売却先の店に連絡をして、確保して貰っています。円満くん、えっと、うちの住人で犯人なんですが、彼と共に明日……日付け変わって今日ですか、買い戻しに行きます」
住人が犯人? おいおい、盗人と暮らしてんのか、はとちゃんは?
くそ、お年玉をあげないでって牽制は、まさかそういう意味だったのかよ!?
あれ、そういえばエマくん、って一緒に初詣行ったって言ってたような? ああ駄目だ全然見えてこない。
「遅い正月休み貰ってるので、今日休みです、今日でもいいです、行きます、心配だし、あの、えっと……すみません、はとちゃんとそういう仲だって、言い出せなくて……はとちゃんにも黙っててって……」
「詳しいお話は、では、こちらで伺います。お早いお越し恐れ入ります。……大丈夫です、僕らとあなたは、敵ではありませんから。おっと、」
ごめんねぇ、やくそくしたのに、ごめんねぇ、と少し遠くから声がする。泣いている。
「は、はとちゃん、行くから、待っててな。大丈夫、はとちゃんはなんにも悪くないから大丈夫。寒いからあったかくして寝な!」
ぐすぐす鼻をすする音がする。
「……すみません、では失礼します。よろしくお願いします」
電話が切れて、まだ心臓がバクバクしているのが分かる。
……いつかは、またはとちゃんが体調を崩すところを目の当たりにするだろう、とは思っていたがこれは、……俺のせい、なのかもしれない。
俺が花を贈らなかったら、お年玉をあげなかったら、はとちゃんは苦しまずに済んだのだろうか? あるいはあらかじめ管理人との交流を持っていたら、あんな、泣きながら謝る声を聞くこともなかったのか?
神様、これ以上はとちゃんから何を奪うって言うんですか。
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