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1.兄と弟
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昔の夢を見た。それは彼にとって遠い昔の事だが、今でも鮮明に覚えている。嫌な思い出ほど、なかなか離れてくれないものだ。
小学校に上がって何年かした頃、赤根秀人(あかねしゅうと)は親に誘われて地元のボーイズリーグに野球を観に行った。
きつい日差しに照らされたグラウンドで駆け回る球児たち。ボールが金属バットに当たる音、大きく振りかぶり、キャッチャーミットに吸い込まれるように投げられるボール。心地がよくて、胸が熱くなった。
すべてが秀人にとって新鮮で、すごく魅力的だった。すぐに親にせがんで、チームに入った。ピッチャーになるため、毎日投げ続けた。家の庭で父親が毎日夕食の後、球を受けてくれた。
「秀人はすごいな!頑張ったら六年生になる頃には、エースになれるんじゃないか」
父親は優しい目で秀人に笑いかけて、いつも頭を撫でてくれた。
秀人の所属したクラブチームは強くはなかった。同い年でピッチャーをやっていたのは秀人ともう一人だったのだが、もう一人は六年生に上がる頃に引越しをしたので、特別野球がうまくはなかったが必然的に秀人になるんだと、周りも、そして秀人自身さえ思っていた。
勉強ができない、口下手で女の子と話すのが苦手でモテることもない、野球が秀人にとっての唯一だった。
「俺もピッチャーになるんだ!お兄ちゃんみたいになりたいんだ」
六年生に上がる頃、二つ下の弟である竜(りゅう)は同じクラブチームに入った。竜はなんでもできる奴だった。顔がいいし明るい性格だから友達も多くて、バレンタインには女の子にいつも持ちきれないほどチョコレートをもらっていた。
学校の体育では何のスポーツをしてもチームの中心になっていたし、秀人の自慢だった。
そんな竜は秀人の自慢で、自分の好きな野球を竜がしてくれる事が秀人は純粋に嬉しかった。それまでは…………
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