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「ねぇ!一ノ瀬くんっ!この資料終わったよ!次何したらいいかな?」
にこにこしながら木戸は俺に話し掛けてくる。
木戸が転校生してきて2週間が経とうとした今、何故か先生の推薦で、木戸と俺、2人で学級委員にさせられてしまった。
俺は必死で笑顔を作り、木戸から資料を受け取る。
「ありがとう、木戸さん。んー...次は、この資料まとめてくれるかな?」
「うん!りょーかいっ!」
特にする会話もなく、黙々と作業をしていると、ふいに木戸が口を開いた。
「ねぇ。一ノ瀬くん。一ノ瀬くんにとって好きなものってなに?」
突然なにを言い出すんだ。沈黙に耐えられなくなって適当に話題を出しただけかと思い、俺は笑顔で木戸さんの方を見る____。
だけど、その表情はあまりにも真剣で、俺は何も言えなくなった。
「私はね、空が好きだなぁ。だって、とっても素直で綺麗でしょう?」
少し悲しげな表情でそう呟く木戸の姿に何故か胸の奥がきゅうっとなる。
いつもにこにこ笑ってる木戸がそんな悲しい顔をするなんて意外で。意表をつかれた俺は、笑顔も忘れて無言で木戸を見つめた。
「...一ノ瀬くんは?なにかある?」
____好きなもの。そんなの...
「好きなものかぁ...。特にないかな。」
あるわけ、ないじゃないか。
俺の家は、父も母も政治家で、とても厳しかった。
"何事にも常に1位であれ"それが両親の教育方針で、俺は自然と周りに合わせてにこにこするようになった。笑っていれば周りが不快な気持ちになることはない。両親だって...俺が従順な人形であることを望んでいる。親にだって俺は素で話せない。
楽しいことなんて何一つない。好きなもの?そんなもの、出来るわけがないじゃないか。
「嘘。あるくせに。一ノ瀬くん、猫...好きでしょ?」
猫...確かに嫌いではない。ただ、猫といると心が和んでその瞬間だけ余計なこと考えなくていいから...。
「下校中、見ちゃった。猫と話してる時の一ノ瀬くん、楽しそうだったよ?」
そういえば、帰る方向結構一緒だったな...なんて、思いながら、俺は木戸を見つめる。
「...普段の一ノ瀬くん。無理して笑ってるように見える...。」
まっすぐ逸らすことなく俺を見つめる彼女の瞳に、俺は情けなく狼狽えた。
何か俺が自分でも気がついてないことまで見破られている気がして...俺はキャラを被ることも忘れて乱暴に声を荒らげた。
「ッ。お前に何がわかるんだ!何も考えずにこにこ笑ってるだけのお前に!何も知らねぇくせに分かったようなこと言うんじゃねぇよ!!」
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