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ーーー「芽衣、これやる。この本、読みたがってただろ?」
ーーー「わあ!ひろちゃん ありがとう!嬉しい!」
真っ白な病室のドア越しに聞こえる少女と知らない少年の声。
病室の前のネームプレートには、【木戸 芽衣様】と書かれている。
親戚の女の子___木戸 芽衣ちゃんは先天性の心臓の病気だ。生まれた時から医師に高校生までは生きられないだろうと言われてきた。幼い頃から病室で過ごしてきた彼女は、それでも毎日楽しそうに笑っていた。
そんな彼女が思い出づくりにと、お願いしてきた望みは、【学校に通いたい】ということ。
医師を何とか説得した彼女の両親は、少しでも彼女が楽しめるように、と 全国でも有名なお金持ち学校で偏差値も非常に高い学校へと転校させた。
だが、その学校生活も長くは続くはずもなく。大きい手術をすることになった彼女は、僅か数ヶ月でその学校をやめ、他県の大きな病院へと入院した。
(...なんか、入りにくいな...。)
病室の中からは楽しそうな男女の笑い声が微かに聞こえる。こんないい雰囲気の中、堂々と中に入れる奴がいたら、それはもう相当な強者だろう。
だが、母さんから親戚の芽衣ちゃんにと受け取った花束を託された以上、いつまでも廊下に突っ立っているわけにも行かない。(肝心の母さんは駐車場で父さんと一緒に待っている)
俺は、そろりとドアを薄く開け、中の様子を探った。
「......ッ。」
思わず息を飲んだ。
ベットに座っている芽衣ちゃんと、そのすぐ横にまるで彼女を守る騎士のように寄り添う男の子。
蕩けるような甘い笑顔で微笑む彼に、俺は一瞬のうちに惹かれてしまった____
笑顔を向けられているのは俺ではないのに、心臓がうるさいぐらいに早鐘を打つ。
___俺は、同級生に比べたら顔は整ってる方だと思っていた。女子にもモテる自覚はあるし、中学生でありながら彼女に困ったことはない。
女子と付き合ったこともある、世間からしたら早いかもしれないがそういう経験もある。
なのに同じ男で、しかも初めてみた奴に、ここまで心がときめいたのは初めてだった。
「...あら、入らないの?」
呆然と立ち尽くしていると、丁度今来た所なのだろう、片手に着替えが入っている袋を持った芽衣ちゃんのお母さんが俺に話しかけてくる。
そして、そのままドアを開けようと芽衣ちゃんのお母さんが手をかけた_____
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「あっ!やっと戻ってきた!あら?芽衣ちゃんの病室行かなかったの?」
乱れた呼吸を整えながら、片手に力を込め過ぎてくしゃくしゃになった花束を持っている俺を見て、病院の玄関で待っていた母さんが首を傾げる。
___芽衣ちゃんのお母さんがドアを開けようとしたとき、思わず全力で走り逃げ出していた。理由はわからない。...体が、勝手に...。
「ごめん。母さん。行けなかった。」
やっと整ってきた息で、そう返事をすると、母さんが呆れたように笑った。
「全く...しょうがないわねぇ。さ、今日はもう帰りましょうか。お父さんが駐車場で待ってるわよ、ほら、來煌。」
そういって歩き出す母さん。俺は 病室の彼のことを想いながら、母さんの背中を追うように、駐車場へと歩き出した。____
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