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日曜
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―たしか、谷村が好きだったのは、ここのコロッケだったよな?
手土産にビールと、揚げたてのコロッケを近くの商店街で買って、向かった部屋は、とっくに引っ越した後だった。
―前もって連絡したのが、裏目に出たか。
あまりのことに、茫然とするしか無かった。
この事実を課長に伝えるかどうか、散々迷い
結局は、幡池先輩づてに伝えて貰うというチキンな手を使った位だった。
その次の日、和泉から呑みに誘われた。
「谷村が辞めるって聞いてんけど、一体どういうことやねん!?」
噂に疎いと定評がある和泉が聞き付けた位だ。
これは、かなりの噂になってやがるな…。
俺は頭を抱えたくなりながら、返事をした。
「それはコッチが訊きたいぜ。」
「はあ?」
体調を崩した日から、これまで20日ほど
俺には全く何の報せもなく、会いに行った日には引っ越した後だったと説明すると、和泉は険しい顔を俺に向けた。
「なんでもっと早うに自分から連絡せえへんかったんや!?」
「いや、メールの返信も来ねえし。何か、避けられてる気がしたからさ…?」
「何言うてんねん!この唐変木!!」
「だってさ。ただでさえ、ストレスが原因で体調が悪いヤツに、変なプレッシャーかける訳にいかねえだろうが。」
「それもそうやけどな。もっと、こう、お前の中にある気持ちを前に出すとか、なかったんか!?」
「…さぁ、どうだろうな。」
俺は気の抜けた答えを返した。
「はぁっ!?」
「なんか、もう、アイツがいた頃が、スッゲー昔みたいに思えるよ。不思議だよな。」
まるで夢から醒めたみたいな、妙な気分だった。
いつの間にか私物が無くなっていたデスクを見ると、もともと谷村は実在しない人物だったような、そんな感覚に囚われた。
仕事中も、私生活でも
張り合い、というか、つっかい棒を無くした俺は、何をしても、満足を感じられなくなっていった。
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