アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-柳原side3-
-
片井くんが跨った自転車をぼんやりと眺めていると、目を合わせずに早く後ろに乗れよと急かされた。
……片井くんも、少しはドキドキしてくれてるかな。なんて、初恋に浮かれる子供みたいなことを考えてしまう。
いや、もしかしたら本当の初恋は片井くんなのかもしれない。
「2人乗り、久しぶりだね。」
「そういや鼻血出したお前乗せて走ったな。懐かしい。」
「そんな昔の話でもないのに、なんかずっと前のことみたいだよね。歳かな~?」
「未成年がよく言う。」
「少なくとも片井くんよりはお兄さんだもん。」
「あーそうだったな。すっかり忘れてた。」
「ちょっ……それ酷くない!?」
大きな背中で前は見えないけれど、悪戯っぽく含み笑いで話をする片井くんに、俺の方まで笑みが零れた。あの頃の俺に今の状況を説明したらなんて言うかな。
「ここ結構揺れるから、しっかり掴まれよ。」
「……片井くんってさ、意外とモテるでしょ。」
「な訳がないだろう。微笑むだけで怖がられるんだ。お前が一番知ってるはずだろう。」
「ふふっ……そうだったね。片井くんが堅物の仏頂面で良かったよ。」
震える手でそっと片井くんの腰に手を回して、背中に頭を預けた。背中からはジメっと汗が滲んでいるのに、暑苦しいと突っぱねずに黙ってペダルを漕ぐ片井くん。当てた耳から微かに聞こえる
鼓動が早いのは、自転車を漕いでいるからなのか俺と同じ気持ちなのか……。
後者だといいなと思いながら、ぼんやりと流れる景色を黙って見つめていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 26