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ー片井side19ー
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放課後になり、俺は柳原の家をもう一度訪問した。相変わらずメールの返事はなく、胸がざわつく。…やっぱり昨日と同じく車も停まっていない。何も悪いことが起こってなければいいが。
そんなことを考えながらドアの前へ行くと、うちの制服を着た生徒が居た。……それも先程、俺の事をじっと見つめていた怪しい生徒だ。
「おい!誰なんだお前?」
「ひぃっ!?えっ……ま、マジ!?あっいや!!俺もその、ひろにぃのお見舞いに来てさ!!そのぉ……あはは……インターホン押しても出ないなぁ~??あれれれ??」
「で、なんでお前が俺の持ってきた果物の袋、持ってるわけ?」
昨日、ドアノブに掛けておいたはずの果物は受け取られておらず、何故かそいつの手に持たれている。最初は泥棒かと思ったが、それ以外は何も持っていないようで、家の鍵もかけられていた。悪いことをするにしては、あからさまに焦った様子で目が泳いでいる。なんなんだ一体。
「返せ。それは柳原の物だ。」
「そ、それは、出来ないっす。」
「……何を隠してる?どこへ持っていこうとしたんだ?」
「ひ、ひろにぃから言うなって言われてるから、それは出来ないっす!!!ごめんなさい!!じゃあ!!」
「まっ、待て!!!……っ!?」
慌てて走って逃げようとしたそいつの手首を力いっぱい掴もうとしたその時、反射的にそいつは俺の手を払った。そのあまりもの速さと、目の前にいた子供っぽい生徒が一瞬で凍りつくような真剣な表情になった事で、つい時が止まってしまった。
俺の目に間違いはない。これは空手の特殊な受け身だ。それをこいつは後ろから掴もうとした手に反応して振りほどいてみせた。……一体、何者なんだ。
「ひぃぃ……す、すみません!痛かったっすか!?とととと、とにかく!今は何も言えないんっす!!!ひろにぃは無事だから!!」
「はぁ!?お前と一緒にいるのか!?」
「ぅぅぅぅしつこいっす!!とにかく、今は会えないってひろにぃが言ってんの!!わかって!?……じゃあねっ!!」
そいつの逃げ足は驚く程に速く、とても追いつけなかった。だが、あいつが手に持っていた名刺の様なものを慌てて落として行ったのを俺は見落とさなかった。裏面には、柳原の独特な丸文字で書かれたここの住所があった。……間違いない、柳原はあの学生のところに居るんだ。でもどうして。
「……衛医療機器事業 副社長 衛 孝太郎。この顔、どこかで。」
メモ替わりにされていた名刺の表面を見ると、CMでも見かける有名な大手医療メーカーの名前と、見覚えのある顔写真が載っていた。……これは間違いない。俺がホテル街から柳原を連れ出した時に一緒にいたサラリーマンの顔だ。あの生徒もこいつと関係があるのか。……いや、それよりもこのサラリーマンの所に柳原が居ると考える方が自然だろう。
「でもなんで今更……援交相手と……会ってるんだ……。」
俺は慌てて、柳原の携帯とサラリーマンの会社に電話をしたが、どちらも繋がることは無かった。
「くそっ……なんで出ねぇんだ。」
かなりの焦燥感からか、サラリーマンの名刺を握りつぶしてしまった。だがそれ以上詮索する証拠は何も無く、俺はただ立ち尽くすしか無かった。
「……何かあったのは間違いない。だが、柳原の事は信じてやらないと。あいつの連絡を……待とう。」
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