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-柳原side1-
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ーー受験生の夏休み、と聞いてまず想像するのは勉強…勉強…補講地獄。ちゃらんぽらんで特に夢を追うでもなく、ただぼんやりと息をするだけの俺には、なんの変化もない夏。……と少し前までは思っていた。
「柳原、長袖で暑くないのか?」
「うん、へーき。冷房きいてるし。」
「眠いなら寝ていいぞ。」
「受験勉強してる奴の前で寝るとか、流石に最悪じゃね?」
「……その、じっと見られてる方が、気になるというか。」
「あっ、そっ…か…そうだよね、ごめんごめん。」
冷房を入れて、窓を閉めていても聞こえる五月蝿い蝉の声が響く教室。そこにいるのはカリカリとペンを動かす片井くんと、それをぼーっと眺める俺だけ。別におかしな光景でもないのだが、俺達にとっては特別な空間となっていた。
そう……恋人同士になって初めて2人きりの教室。いわゆるお勉強デート、的なやつだ。
援交をやめて、片井くんといて少しでも違和感がないように髪まで黒く染めて、ちゃっかりマイクドナルドの社員として内定を貰い更生した俺。そのせいで以前に増して、暇になった。で…家にいたくないなーとなんとなくぼやいたら、こうして片井くんの受験勉強に付き合うことになった次第だ。誘ってきたのは意外にも片井くんからで驚きを隠せないが、断る理由もなかった。
ーー俺達はずっと今まですれ違い続け、避けるように生活をしてきた。もうだめかと思っていたが、互いに語らずとも、その時間を埋めていくようになるべく時間を共有するようになった。
…まぁ悲しいことに、付き合って変わったことはこれくらいなのだけど。
「ちょっとだけ寝ていい?」
「ああ悪い。つまらなかったら本当に帰っていいからな。」
「ううん、片井くんと…一緒に…いたい。」
あーなんか口走ったなぁ、と思いながらも、心地のいいペンの音を聞きながら、机に伏せた俺はすぐに眠りについた。
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