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「やめろ!!!」
咄嗟に声が出てしまった。
ハッとして、口を抑える。
喉元を突き刺そうとしていたナイフは止まり、今度はしっかり目が合った。
「蒼羽さん?」
らしくないと自分でも思う。
いつもは何考えるかわからない草薙も、珍しく心配そうな顔をして僕を見ていた。
「へーーーぇ。心配はしてくれるんだ?」
男の皮肉な笑顔に、感情を出してしまったことを後悔する。
この手のやつは、とことん無視を決め込むべきだった。
そもそも、関わるべきではなかったのだ。
「蒼羽ぁ、見て、ほら!」
ザクッと男は自分の手首を切りつける。
ポーカーフェイスを作ったけれど、冷や汗が頬を滴るのが、自分でもわかった。
構って欲しくて、他人も自分も傷付ける奴を、僕はよく知ってる。
今更、それに感情を揺らされたりすることはない。
ない、はずだ。
「見てろよ!次は手首切り落ちるかも!!!」
また、男が同じところに刃物を当てようとした時、横でシュッと何かが風を切った。
その瞬間、ガシャっと男の手に何かが当たり、刃物を落とした。
「あの灰皿、お客さんにもらったやつなんですけどね」
仕方ないか、と草薙が冷めた目で、男を見下ろす。
ベランダに置かれていたガラス製の灰皿を投げたらしい。
「やっと来た」
ちょうど到着した警察に、男は慌てて刃物を拾おうとするが、手が折れたのかすぐ落として、あっけなく押さえつけられた。
わー、わーと僕の名前を叫んで、殺してやるとか、愛してるとか交互に喚き散らしながら、パトカーに押し込まれる男をなんとも言えない気持ちで見下ろしてると、気が抜けたのか、くらっと目眩がした。
けれど、すぐ草薙に支えられ、倒れることはなく、その場に座り込んでため息をついた。
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