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高3夏の憂鬱
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朝、カーテンから漏れる光にゆっくり目を覚ます。
隣を見ると、昨日一緒に寝たはずのルリの姿はなく、ドアの外から談笑する声が聞こえた。
リビングかな?
スリッパをペタペタならしながら、廊下を進んでドアを開けると、パンとバターの焼けるいい匂いが鼻をかすめた。
テーブルで新聞に目を通す月城と、キッチンにエプロン姿で立つルリが朝から楽しそうに何かを話していた。
「あ、純ちゃんおはよー。もうちょっとでご飯できるから座っててねー」
俺に気付いたルリと目が合い、穏やかに微笑んだ。
なんと言うか、爽やかだ。
とりあえず、月城の横でも前でもおかしい気がして斜め前に座る。
「おはよう、原野。昨夜はよく寝れたか?」
「んー、まぁ」
「リチェールひっつき癖あるから、あんま寝れなかっただろ」
月城はお見通しと言ったように、悪いな、とクスクス笑う。
その通りだった。
「えー、なんだよぅ。千こそ昨日オレがいなくて寂しくて寝れなかったんじゃないのー?」
カウンターキッチン越しにルリがぷくっと頰を膨らませるのが見える。
おいおい、可愛いな。
「久しぶり安眠できたっての」
「そんなこと言っても、今日もひっついてやるもんねー」
べっと短い舌をだして言い返すルリも楽しそうで、朝から何を見せられてるんだと、苦笑する。
そんな痴話喧嘩をしながらも、月城に2杯目のコーヒーと、俺にアイスココアをいれて先に出してくれた。
徐々にテーブルに朝食が並べられていく。
フランスパンのフレンチトーストと、カリッと焼かれたソーセージと、半熟の目玉焼き、トマトスープとサラダもついてカフェで食べるようにランチマットに並べられた。
てか、目玉焼きに海苔でニッコリマークの顔が書かれてたり、ソーセージがタコの形だったり、サラダに乗ってるハムが星形だったりするんだけど。
横を見るとルリのプレートはシンプルで、俺だけお子様扱いかとムッとする。
しかし、よく見ると月城のプレートはソーセージから、ハムから、目だ焼きの顔の目までハートの形で、少し悲惨だ。
慣れているのか、月城は特にリアクションもなく、いただきますと手をつけた。
いや、30近い男がそんな可愛いもん食ってるのシュールなんだけど。
「ねーねー純ちゃん、今日何して遊ぶー?」
確かに今日は土曜日だけど、受験生とは思えない呑気な質問に思わず笑ってしまう。
「帰って勉強する。ここに来たおかげで色々落ち着いたわ」
将来のことに悩んで、進めないうちはとりあえず、勉強しよう。
一番時間を無駄にしない方法だと思った。
「えー、じゃあオレが教えたげるからまだ帰らないでよー。せめて夕方まで一緒にいよー?クラスも別々なんだからさー」
残念そうにルリが俺を見つめる、
ルリに教えてもらえるなんて、ありがたい話だけど、ルリは自分の勉強はいいのだろうか。
「お前な。早く佐倉と仲直りさせてやれよ」
「あー、そっかぁ。えー、純ちゃんといたかったかなぁ」
なんかここにきて、本当に悩みが全部解決してしまった。
ルリは、クラスが離れても変わらず俺を大切にしてくれてたんだ。
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