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高3夏の憂鬱
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「おはようございます!!」
元気よく飛び交う気合いの入った挨拶に松井は、おはよーと気の抜けた返事をして目もくれずすたすた歩いてどかっと椅子に腰掛けた。
「ルリくんと純ちゃんもそこに座っててもいいし、このスタジオから出ないなら好きに見て歩いて良いからね」
純ちゃんと呼ぶのはルリの真似だろうか。
正直少し不快。
しかし、無くさないでねと渡された入館証といい。オフィス街の一等地に立ったビルや。広いスタジオといい。ぺこぺこ頭を下げる大人達を見てると、どうやら松井は本物の編集長だったらしい。
「あ、この子たちね、僕の隠し玉。今日はとりあえず見学だから好きに見せてあげてね」
周りの痛いほどの視線についルリの後ろに隠れると、松井が紹介をしてくれた。
「こんにちは。リチェールアンジェリーです」
ルリの完璧な笑顔と挨拶を真似しようとしたけど、言葉が出てこなくて会釈だけすると、「こっちの子は人見知りですみません。純也です」とルリがフォローしてくれた。
...やっぱ俺って、世間知らずだし、加えて意気地無しだ。
こんな俺がいつか社会でやっていけるのだろうか。
「ちょっと編集長〜。どこに隠してたんすか。しかも2人ともレベル高いっすね!」
「でっしょ〜。でもまだ口説き中なの」
じろじろと品定めするような視線がキモくて思わず顔を顰めてると、いつのまにかルリも奴らと楽しそうに談笑している。
あいつのコミュニケーション能力どうなってんだ。
「まっちゃん、ただ見せてもらうだけじゃ悪いから何か手伝得る事あったら言ってねー」
「え!あるある!ちょっと着替えてあの照明の集中してるところに立ってくれるだけで良いんだけど!」
「それ以外ねー」
「え〜〜〜」
ルリの言葉に浮き沈みしながら、心底残念そうに深いため息をつく。
「本当好きに見て回って良いよ。まだ撮影まで時間あるし少しでもこの仕事好きになってね。で、月城さんにめっちゃ楽しい現場だったって伝えてね」
本命は月城ってのブレねぇな。
あの面倒臭いことが嫌いな月城が、有名になるってわかってて出るわけねーじゃん。
あったらとっくに容姿だけで芸能界の天下とってんだろ。
そんなやりとりを横目に、実際このおっさんが作ったという雑誌をパラパラと見る。
ファッションに疎い俺でも知ってるこの雑誌出身の人気タレントも山ほど出してる超有名雑誌だった。
メンズもレディースも扱っていて、男女兼用のブランドも多い。
今日現場にいるモデルも男も女もいた。
そのうちの何人かの女に睨まれたので、癖で睨み返す。
てか、みんな実物よりブスなのな。
そりゃそうか、スタイリストといいから、照明とか使った演出からプロのカメラマンまで勢揃いで作り上げてんだから。
その辺に芸能人いても、こうも違うんじゃ気付かねーと、思えてしまう。
「9時になったので撮影始めまーす!あずさ
ちゃん、ゆうりちゃんからねー!」
男の声が響いて、厚化粧の女が2人照明の前に立った。
演習の風が吹いて、その瞬間、2人の雰囲気がガラッと変わった。
パシャパシャパシャと、思ったよりハイスペースに切られるシャッターと、眩しすぎる照明の中、堂々と次々にポーズを変えていく。
さっきまでブスだと思ってた女は、まるで絶世界の人のようだった。
ああ、厚化粧はあの眩しすぎる照明に合わせたものだったんだ。
風でなびく長い髪が顔にかかっても、目にかかっても、それすら様になってる。
ずっと見ていられると思った。
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