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高3夏の憂鬱
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遠くで雅人の声がする。
興奮して話してるうちにいつのまにか寝てしまったのか、俺はベッドの中だった。
雅人がソファで寝た俺を運んでくれたのだろう。
まだ眠くて目は開けられないけど、タバコの匂いと雅人の声が心地良くてこのまま二度寝するんだろうなとぼんやり思った。
「ほんと、ファッション誌の撮影現場見てきて夢ができたとか言い出したから、正直モデルになるとか言い出したらどうしようかと思ったけど」
クスクスと笑いまじりに話してる。電話だろうか。
相手は、また月城かな。
「まさか、カメラマンとはねー。正直そっちかぁって安心したよね。どう見ても撮られる側の容姿なのにね2人とも」
そう、俺はカメラマンになるんだ。
また今日のことを思い出して胸がドキドキしてくる。
本物より本人の良さを切り取った小さな世界。あんな芸術品のような写真を俺も撮りたいと思った。
でも、俺もルリはモデルの方が合ってると思う。
けれどルリは、マネジメントの道に進むらしい。
あの時、謝り続けたあの男を見て俺は不憫でしかなかったし正直少しダサいと思った。
しかし、ルリ曰くあんなにも弱い立場、辛い状況でモデルの力を信じて自分の仕事をやり遂げたあの男はかっこいいんだと感じたらしい。
謝ることだけじゃなくて、そうならないためにどう回避するかなとか、どうタレントやモデルを管理してるのかなとか、営業先でどううまく取り入るのかなとか考え出したらすごい難しくてやりがいありそうじゃん、と燃えていた。
ルリと進む道は完全に別れてしまったけど、楽しみが勝つ日が来るなんて。
「少年よ大志を抱けってやつだね。あんなにうじうじぴーぴーしてたのに、目ぇキラキラさせてさー。ほんと、俺がどんな気持ちで待ってたかなんて知る由もないんだろうなー」
俺のことを雅人が楽しそうに話す。
そういえば、今日は帰ってからろくに昨日のことを謝りもせずに自分のことばかり話してしまった。
明日起きたら雅人にちゃんと謝ろう。
それから、ありがとうも伝えなきゃ。
きっと雅人と出会う前の俺だったら、今日のことがあっても、感動したで終わって居ただろう。
いや、感動したかどうかもわからない。
この夢を追いかけたくなったのは、将来のことをしっかり考えろと言い続けてくれた雅人がいたからだ。
中途半端に就職して進学から逃げようとしたり、適当に進学してルリから離れないことばかり考えていた俺を何度も怒っていた。
それは、引きこもりで落ちこぼれだった俺の将来を投げやりになってる俺より信じていてくれたからだ。
自分のことをまっすぐ応援してくれる人がいるのって、こんなにも心強いものなんだ。
明日、起きたら雅人にありがとうって言って、夢のためにまた勉強を見てもらうんだ。
だんだんと薄れていく意識の中、優しい指先が俺の髪をさらっと撫でた。
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