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月城千のいいところ
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「千とちょっと距離をおきたい。しばらく許せそうにない」
そう言ってルリくんが家に来たらしい。
だからルリ今日からしばらくうちに泊まるからと電話で話す純也はなんだか少し嬉しそうだ。
いやいいんだよ。普段俺らの方が喧嘩のたびに散々世話になってるから、全然泊まるのはいいんだけど。珍しくね?
部活のない三年生はもう家だろうけど、俺たち教師陣はまだ帰る時間じゃない。
だから千くんも当然まだ家じゃないし、なんなら今喫煙タイムで横にいるんだけど、どう喧嘩になると言うのだろう。
「ねーねー、ルリくんと喧嘩した?なんか今日うちに泊まるってよー」
横でタバコを吸うイケメンに言うと、思い当たることがあるのか小さく舌を打ち、二本目に火をつけた。
「俺が雑誌に載ったろ」
「あー、アレね。最近やっと落ち着いてきたところじゃん。なんで今更それで喧嘩になるの?」
「リチェールがあの時の写真切り取って、引き伸ばしてアホみたいにでかいポスターにして壁に貼ってんだよ」
「ブフォッ」
コーヒーが気管に入った...っ。なにそれ想像したらウケる。
あの夜の帝王のようなキメッキメの写真が、千くんのお洒落リビングにどでかく飾られると思ったら笑いが止まらない。
「ごめ...!つ、続けて」
ヒィヒィ笑う俺に若干イラっとした顔をしながらも続きを話してくれた。
「雑誌も家に5冊はあるし、玄関開けたらまず額縁に入れて飾られてるわ、寝室の枕元に飾られてるわ、トイレから洗面所までラミネートまでされたやつが貼ってて、飾られてない部屋はないくらい至る所にベタベタ貼るもんだから全部捨てろってつってんだけど頑なに捨てねぇし。
今日リチェールが朝講習で俺より早く家出たから、まとめて捨てた。そのこと怒ってんだろ」
ダメだ。これ笑いこらえるとか無理。
「なんで捨てちゃうかな〜。見てみたかったんだけど」
目尻の涙を拭いながら言うと、また睨まれた。
ルリくんから絶対に許さないとラインが入っていたらしく、携帯を見て顔をしかめてる。
「まぁ、捨てても無駄だと思うよ。純也から聞いたけど、家に置いてるのとは別で一冊持ち歩いてるらしいし、下敷きもハードのクリアファイルに千くんのあのページ挟んで使ってるって」
「まだあったか...」
心底うんざりしたように千くんが深くため息をつく。
こんな風に頭抱える千くんとかレアなんだけど。ルリくんって本当すごい。
「まぁ気持ちはわかるよね。俺も純也の載ったやつ3冊買ったし、あのページの写真でキーホルダー作ったし。あ、ルリくんに教えてあげようかな」
「........」
「あはは!そんな冷たい目で見ないでー」
自分だって、雑誌のこと怒ってた割にルリくんが載ったやつちゃっかり一冊買ってたじゃんね。
「てかルリくんって、千くんが雑誌に載って騒がれてるの最初怒ってなかったっけ?」
「あいつ結構わがままだよな」
ルリくんをわがままだと思ったことはないけど、千くんからしたらそうだろう。
勝手に写真撮られて帰ってきて変なファン増やしたあげく、それを同じやり方で鎮静させたら今度は千くんが比にならない騒がれ方して、それは許せないと怒って、しかし写真はオタクのようにコレクションしてる。
ああ、うん。わがままだわ。
まぁ相手が千くんだから甘えてるんだろうけど。
「可愛いわがままじゃん」
「じゃあお前自分のアホみたいかっこつけた写真引き伸ばして家中に貼って24時間過ごしてみろよ。可愛いって言えるか?」
「あー、気が狂う前に燃やすわ」
「だろ」
自分なら確かにごめんだけど、やっぱり想像したら面白い。
安定してるように見える千くん達もこんなことで喧嘩したりするんだ。
「まぁうちにはどれだけでも預けてくれて構わないからさ」
ぽん、と肩を叩くと珍しく疲れた顔をした千くんがまたため息をついた。
「こんなアホみたいな喧嘩長引かせてたまるか。今日家寄るわ。連れて帰る」
「アホみたいって...」
否定できないけどさ。
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