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月城千のいいところ
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「帰るぞこのバカ」
仕事が終わり千くんを連れて家に帰って、ルリくんに投げつけた第一声がこれ。
全員が凍りつく。
「.....第一声がそれ?ごめんとか、やりすぎたとかないわけ?」
いつも穏やかなルリくんが眉を潜めて、ピリピリとした空気が流れる。
うんうん、俺もわざわざ引き伸ばしたり、額縁にいれたりラミネートしたりするくらい大切にしてたやつを捨てるのはやりすぎだと思う。
そりゃルリくんも怒るのは当然。
俺も、純也が雑誌を捨てようとしたりキーホルダーを引きちぎろうとした時は喧嘩になりかけたし。
「人ん家だぞ。迷惑かけてんのわかるだろ。さっさと帰る準備しろ」
人に迷惑という単語でルリくんが、グッと黙り込む。
俺や純也は全く気にしないし、むしろいつも俺らの方がかけまくってんだけどね。
「うちは迷惑とか全然思ってないから、そこは気にしなくていいよ〜」
てかルリくんが俺らの家以外に家出してたらもっと怒るくせに。
千くんの気持ちもわかるし、たぶん客観的に見たら千くんが正しい。
でも喧嘩の原因聞いちゃうと、同じようなことしてる俺はどうしてもルリくんの肩を持ってしまう。
「月城の気持ち、ほんっっっとうに、わかるけどさぁ、ルリも頭に血が昇ってて帰ってもすぐ仲直りってならないだろ。一晩離れてお互い冷静になれば?」
たまらず口を挟んだ純也は、珍しく千くん派。
てか、お前はルリくんを泊まらせたいだけだろ。
「片付けたとかならまだいいよ。大切に飾った写真がグシャグチャに丸められてゴミ箱に捨てられてるの見つけたオレの気持ちわかる?」
「俺の写真を俺がどうしようが勝手だろ」
怒りなのか、泣きそうなのか、少し声を震わせるルリくんに、千くんが吐き捨てるように言葉を投げる。
ルリくんはうんざりしたように頭を抱えた。
「あーもう話になんない。とにかく帰りません。迷惑になるってんならしばらくホテルとる。千の写真がなくなったあの部屋にいるのは今はちょっと辛いの」
「目の前に実物がいるだろ」
「そういう話じゃないってば!オレが大切にしてたの見てたよね?」
「俺が何度も捨てろって言っても自分で捨てねぇからだろ」
「捨てたくないから捨てないんじゃん。飾っていたいから飾ってるの。何か千に迷惑かけた?お金がかかってるわけでもなければあのポスターから蛙が飛び出してきたわけでも、噛み付いてきたわけでもないのに」
この2人にしては珍しく、だんだんとヒートアップしていく。
ルリくん成長したなぁ。成長したって言っていいのかわからないけど、年不相応に大人びて物分かりのいい子だったから、これだけわがまま言うってのはよっぽど大切だったんだろうし、それをぶつけれるようになったことはいいことだと思う。
言ってることは屁理屈だけど。
仕事では一切疲れを見せない千くんが、疲れを前面に出して鬱陶しそうに長い前髪をかき上げた。
「で、お前はこのくだらないやりとりどれくらい続けたら気が済むんだよ。使ってない客間あんだろそこ自分の部屋にしていいから好きにやってろ。めんどくせぇ」
うわ、大人気ない。
これ女の子との喧嘩でやったら超長引くやつじゃない?
ルリくんは怒りでなにも言えないと言ったように口をワナワナさせて拳を握ってる。
「千のそういうとこ、ほんっとうっに嫌い!!!オレが事故って記憶なくしたことをいいことにスヌード捨てたことオレまだ根に持ってるからね!?」
あー、女の子によくあるやつ。五億年前の喧嘩をあれこれ引っ張り出して攻めてくるやつね。一生終わらないの。
意外とルリくんねちっこいなぁ。
その辺純也は男らしいからこういうやりとり忘れてた。
「へぇ。嫌い、ね」
すぅっと冷たい笑顔を浮かべた千くんに、全員が息を飲む。
俺、結構短気だと自分でも思うけどさ。
怒らせた時一番怖いのってたぶん千くんだよな。
睨んでるわけでもないのに顔がいい分すごい迫力。
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