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数日後の午前中、レオンはクレトと大きな教会を訪れていた。
歴史を感じさせる石造りの礼拝堂の屋根の上には尖塔と十字架があり、多くの者が教会と聞いてイメージするであろう出で立ちだ。
あらかじめ電話で聞いてあった通りに、そこをぐるりと回り込むように芝生の上を歩く。
クレトは少し緊張した様子だが、物珍しそうにあたりをきょろきょろと見回していた。
子供らしい好奇心は健在のようで、レオンがほっと胸を撫で下ろす。
まだ10歳という年齢で辛いことを経験し、その後も嫌なことが続いた。
子供らしさを失ってほしくない。
心が萎えていないか心配だった。
クレトのピアノは、まだ彼の感情を表出させるには不十分だった。
はけ口が必要だが、どうしたら良いか分からなかった。
それでも安全に学べる環境は用意してやりたい。
他にもできることがあればやってあげたい。
だから、ここへ来た。
レオンはクレトの様子を見ながら足を進めた。
やがて見えてきたのは灰色の建物と木の建物。
2人は木の建物の方へと歩いた。
明るい色の木材がふんだんに使われ、吹き抜けの窓からは日の光が降り注いでいる。
温かみのある入り口の奥にガラス窓があり、近くにいた女性と目が合ったのでレオンは「先日電話したナイトレイです」と名乗った。
彼女は「お待ちしていました」とにっこり笑うと、横のドアから出てきた。
彼女が自己紹介するとレオンはクレトを紹介し、彼女はクレトにも名乗ると握手をした。
「歩きながら説明しましょう。どうぞ」
そう言って奥へと向かう彼女の後ろにレオンとクレトはついていった。
明るい中庭をゆっくりと横断しながら彼女は説明してくれた。
この教会は小学校から高校までを持っていること。
しかし、一般的な学校のように毎日授業があって、きっちり組まれたプログラムがあるわけではないこと。
そして、彼女は振り返ってにっこり笑った。
「つまり、自由なんですよ、ここは」
集う子供達は基本的には自分で学んでいる。
ほとんどの子供がホームスクーリング用の教材を持ち込んで、ここで学んでいるのだ。
だから毎日通学する必要は無い。
各自好きな時に登校しているので、週に2回ほど来る子供が最も多い。
教師たちはそのサポートをしているだけなので、いわゆる授業のようなものは無い。
費用も公立校と同程度。
行事はあるが参加は自由で強制はされない。
クレトは教室にいる子供達の姿を見、まだ誰もいない食堂や図書室などを見学した。
学校ではあるが、良くある校舎のような作りではなくて、ここはデザインがユニークだ。
中庭をぐるりと囲むように各教室が配置されていて、窓も大きいので、とにかく全体が明るい。
渡り廊下はまるで遊具のようだし、何より木の香りが心地良い。
いつの間にかクレトは、ここが好きだと思うようになっていた。
そんな彼の表情を見て、レオンは
「気に入ったか?」
とクレトの頭をわしゃわしゃと撫でた。
クレトは満面の笑顔で頷いた。
諸々の手続きを終え、クレトは翌週からここへ通い始めた。
スクールバスは無いのでレオンに送り迎えをして貰わなければならない。
その分レオンの負担になるが、クレトの心配を彼は笑い飛ばした。
「そんなもんガキが気にすんな」
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