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クレトは、本人曰く“邪道のピアニスト”から教わり続け、今ではだいぶうまく弾けるようになった。
バンドが入る前の時間帯に、BGM代わりにクレトがピアノを弾くのは珍しいことではなくなった。
時にはレオンと連弾もする。
まだまだ拙いクレトのピアノにレオンが色と味を添えていく。
その様を、マスターは微笑ましく見ていた。
成長するにつれ、クレトの音色は単なる上達ではなく、変わっていく。
少しずつ、感情が音に出るようになった。
特に連弾の時はノリも表情も違う。
レオンとは親子のようなものだし、ピアノはレオンから教わっているわけだから、一緒に弾けてクレトは嬉しいのだろうとマスターは思っていた。
しかし、クレトが退院してから音が艶っぽくなった。
もうガールフレンドがいてもおかしくない年頃なのだから恋をしているのだろうと思った。
だから時々クレトをからかってみるのだが、どうも浮いた話のひとつも出てこない。
上手に隠しているのか照れる様子も無く否定する。
じゃぁ、あの音の変化は何なんだろうな…?
マスターは首を傾げた。
しかし、しばらくしてマスターは、おや?と思い始めた。
確かに、もともとクレトとレオンは仲が良い。
親子というには年が近く、兄弟というには年が離れた2人だが、クレトがレオンと暮らすに至った事情は知っている。
それを考えれば仲が良いのは当然だ。
そう思っていた。
クレトが親代わりのレオンにためらいなく甘えたいのを我慢しているのは気付いていた。
レオンを追う目が子供らしく愛情を欲していることを物語っていたからだ。
レオンもレオンで、親が子にするようにはいかないものの、年の離れた弟に向けるような表情でクレトを可愛がっているのは見ていたし、クレトをいつも心配し優先しているのは知っていた。
だが退院後、2人とも目が変わった
クレトは、親ではなく、もっと近しい者に向けるような視線をレオンに向けていることが、しばしばあった。
レオンのクレトを見る目も弟に向けるようなものより、もっと強く大切にしたい者へ向けるようなものに変わっていた。
刺されて入院というのは大きな出来事だ。
それがきっかけで2人の絆は深まったのだろう。
もしくは単純に、刺された恐怖がクレトをレオンに縋らせ、腹から血を流したクレトを見た恐怖がレオンに更なる心配を上積みしたのか。
しかし、それでは音色の変化に説明がつかない。
マスターは再び首を傾げた。
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