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⑥ 陽
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両親が死んだ時の事。
この頃の俺は中学1年で正宗は小学5年生。
悲しくても長男としてやらなければならない事が多過ぎた俺には、泣く暇も、正宗に気遣ってやる暇も無かった。
だから正宗が俺に迷惑をかけないように我慢している事に気づけなかった。
だって、俺の前では1度だって泣かなかったから。
俺達は昔から俺達兄弟を可愛がってくれていた父親の弟、三好に引き取られた。
引き取られてからも忙しかった。
三好は優しいけど、世界を飛び回る仕事をしている為家には殆ど帰って来ない。
だから弟の為に今で家庭科の授業でしかやった事のない家事をやる。
ある日。
三好のうちに来て一ヶ月くらいが過ぎた頃、俺は倒れてしまった。
その時、初めて正宗は泣いた。
「うっ、…うぅ…にいちゃっ…」
俺は驚いた。
両親が死んだ時も涙を見せなかった正宗が泣いている。
「まさ?どうしたんだ?」
こんな事は初めてで、どうしていいのか分からない。
「にいちゃ…いなくなっちゃ、やだ…。」
正宗が、初めて甘えるように俺の指をちょこんと握る。
俺は、正宗が寂しがっていたことにやっと気づく。
まだ小さいのに、迷惑かけないようにってずっと我慢してたんだ。
両親がいなくなって、悲しくない筈ないのに。
「まさ、ごめんな。」
正宗の小さな体を引き寄せ、ぎゅぅっと強く抱きしめる。
「兄ちゃんはいなくならないよ。ずっとまさと一緒だから。」
そう言うと、我慢の糸が切れたかのように正宗は泣いた。
声を上げて、顔をグチャグチャにして泣いた。
ずっと大切にしよう。
この時俺は、そう誓った。
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