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井端甫が倒れてから、一週間が経とうとしていた。
一通りの契約を済ませた兵藤晃はその日の内に撤退し、解毒薬作りに没頭する九十九昴は食事すら取らない勢いで作業を進めている。
毒による発熱、嘔吐に苦しむ井端甫の世話をする向田篤志もただただ見守ることしか出来ない自分を責め、『SUBARU』は今までに無い、暗い雰囲気につつまれていた。
そんな『SUBARU』にやっと光が戻ったのは、一週間後の深夜。九十九昴が解毒薬を完成させたのだ。
「出来た‼︎‼︎ これで甫さんを救えるよ。」
九十九昴が作り出した解毒薬を井端甫に注射し、その効果が現れるまで、固唾を飲んで見守ること約30分。
それまでとても荒く苦しげだった呼吸が落ち着き、健やかな寝息をたてはじめた井端甫に一同、安堵のため息を吐くのだった。
「昴くん‼︎ありがとう‼︎本当にありがとう‼︎
甫が助かったのは、君のおかげだ。なんてお礼を言ったらいいのか…」
しかし、そんな向田篤志の言葉は九十九昴には届かなかった。ゆらりと揺れ、まるでスロー再生の様にゆっくりと倒れていく九十九昴を藤城悠が慌てて抱きとめる。
「昴‼︎」
「昴くん‼︎」
慌てた向田篤志も駆け寄ってくるが、その口元は緩く孤を描き、スヤスヤと幸せそうに寝息をたてていた。
「んんっ…むにゃ…。」
「むにゃって…」
その幸せそうな寝顔に思わず微笑む藤城悠に、向田篤志も微笑む。
今度こそやっと手に入れた幸せに、向田篤志は井端甫の手を握り静かに涙を流した。
「やっとだ…」
弱く、しかし確かに握り返されたその手に意識の無い筈の井端甫が返事をしたように向田篤志は感じた。
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