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忙しい昼時が終わるとティータイムに入り、長居する客が増える。
「人手は足りてそうだから、俺はちょっと情報収集に行ってくるよ。」
九十九昴は人の会話から情報収集することの腕前もさることながら、人から情報を引き出すテクニックも『SUBARU』一だ。
九十九昴は自分の周りで発せられた全ての音を情報として読み取り、その中から必要な情報だけを振るいにかける。
その情報処理能力は、たった数メートル歩いただけで、数十万稼げる程の情報を得ると言われる程の物だ。
ただ宛もなく歩くのではなく、どこに行ったら自分の求める情報が音として発せられているのか、それを判断し行動する。
この能力は全て『SUBARU』の元の所有者である夏目直孝によって僅か1ヶ月で教え込まれた物だ。
「一人で大丈夫なのか?」
藤城悠はあの一件から、九十九昴が一人で外出することをあまり良しとしない。
「大丈夫だよ。心配なら…篤志さん‼︎一緒に行かない?」
突然声をかけられた向田篤志は一瞬戸惑うものの、昼時の様に食事系の注文が入らないティータイムでは暇な厨房に、有村春一と二人きりという状態から逃れるチャンスとばかりに、さっさと厨房から姿を現した。
「俺は構いません。」
「篤志さんが一緒ならいいでしょ?」
九十九昴の提案に、藤城悠は井端甫に目を向ける。見えていない状態が余計に他の部分を敏感にさせているのだろう。
情報収集の仕事の一環で九十九昴達の話を聞いていた井端甫は、藤城悠から向けられた視線に敏感に反応した。
「いいよ。僕は大丈夫だから、昴について行ってあげて。ここにいる分には何の不自由も無いし。」
井端甫の言葉に藤城悠は頷き、九十九昴と向田篤志を送り出した。
「よかったの?折角篤志と一緒に居られる時間だったのに。」
有村春一が厨房から顔を出し、井端甫の腰掛けるカウンター席の横に腰掛ける。
「いいんだ。昴、なんだか篤志に用があるみたいだったし。」
九十九昴が一緒に情報収集をしていた時、向田篤志をたまに見ていたことを何と無く感じていた井端甫は、九十九昴と向田篤志が二人で話せるように配慮したのだ。
「なんだ。結局は寂しいんじゃん‼︎仕方が無いからお暇な俺様が、甫ちゃんのお話相手になってあげよう。」
「えぇ。本当⁈嬉しいな〜」
上から物言う有村春一に、わざと棒読みで嫌味を込めて返す井端甫に、藤城悠は頭を撫でた。
「甫。少し休憩してていいぞ。この程度の客の数なら、俺一人で情報処理出来るから。
春一と話してな。」
藤城悠の提案に、少し考えてからしっかりと藤城悠の目を見て頷くその姿は、目が見えていないとは思えない。
「ありがとう。少し休憩させてもウネ。」
「春一。注文入るまで甫の相手してやってくれ。」
「いいよぉ。なんでも聞きな。出来る範囲で答えてやる。」
話し始める有村春一達に、安心のため息を吐き仕事に戻る。
「なんか怪しいけど………じゃぁ、まず皆さんについて教えて欲しいかな。」
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