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「わかった。全部話すよ。……でも、帰ってからね。何かしら情報持って帰らないと、悠に怒れちゃうから。」
裏道を抜ける。宛も無く歩いていたはずが、いつの間にか兵藤組の島の中心に来ていた。
辺りは裏稼業の者たちばかりで、屋台も出ている。
「此処で情報を集めるのか?」
向田篤志の疑問は最もで、兵藤晃の知り合いである九十九昴は有名人。彼方此方から声が掛かる。
「ども、昴の姐さん。今日も仕事ですかい?陣内の連中にやられたって聞きやしたけど、その後、具合の方は?」
辺りにいる組員達の中で、一番偉そうな人物が、九十九昴に声をかけてきた。
「やぁ、典。こっちの方で少し用事があるんだ。あまり広めないでって言っておいたのに、典まで知ってるなんて。兵藤さんは心配性だな…。」
林田典雄 -ハヤシダ ノリオ-
兵藤組の舎弟の一人。
情報収集の為によく訪れる九十九昴を姐さんと慕っている。
「若は雪姐さんのご友人の姐さんが心配なんですよ。姐さんが怪我なんてしちまったら、雪姐さんが悲しくなっちまうからな。」
「誰思いなんだか…。」
自分が姐さんと呼ばれていることに対して、特に反応を見せない九十九昴に向田篤志が痺れを切らして、口を挟む。
「昴、君は男だろう。何故姐さんと呼ばれているんだ?」
怪訝そうな顔をしている向田篤志に思わず笑いが零れる。
「ふふっ…何度も直したけど、直らなかったんだ。もう諦めたよ。」
「昴姐さんはそこらの女よりも美人さんだからよぉ、兄貴って呼ぶのはちっと気がひけてねぇ。兄貴よりも姐さんのがあってると思うんですがね。」
向田篤志は呆れた風な顔をしたが、林田典雄の言い分も分からないことは無かった。
確かに九十九昴に兄貴は似合わない。きっと誰もがそう思うだろう。
その後少しの会話を交わし、林田典雄とは別れた。結局その後はどこに行くでも無く、BARに変わる前には『SUBARU』に戻って来ていた。
「情報を持って帰らなくて良かったのか?」
「もう集めたから大丈夫だよ。」
ーいつ集めたんだ?
ただ、林田典雄と他愛の無い会話をしただけに見えていたそのほんの少しの間に、九十九昴は情報収集を行っていたのだ。
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