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店を飛び出し、降りて行ってしまった直通エレベーターではなく、複数階に止まる内部用エレベーターに乗り、赤髪の男を追いかける。
「早くっ??」
丁度退社時間とかぶってしまった事で、地上に着くのに数分遅れてしまったが、それでも、追いかけるのには十分だった。
前を歩く赤髪の男は、まるで九十九昴を誘っている様で。
九十九昴は歩調を早め、赤髪の男に近づく。
だんだんと人通りの少なくなって来た所で、赤髪の男が路地裏へと姿を消した。
そこに行くのはとても危険であり、1人で追いかけるべきで無いことは確実だった。
しかし、実際に赤髪の男を目の前に、追わないという選択は九十九昴には出来なかった。
6年間という長い間、『DED』という組織を追い続け、唯一の手がかりである赤髪の男を今
ようやくその目に捉えたのだ。
今まで情報を一切掴めなかった中、突然、動きを見せ、手に入る情報に、現れた赤髪の男。今しかないと、そう九十九昴には思えた。
「ごめん…悠、」
今路地裏に入れば、今まで通りの生活に戻れる保証はない。命さえ危うい。今も『SUBARU』にいる皆にもう一度会える確率は1%もあるかはわからない。
だから、最後に祈った。
神など信じたことは無かった。母も父も、兄の様に慕っていた人をも奪って行った惨い運命に、神などいないと思う他無かった。
それでも、最後は神に祈るものだ。その存在が必要だから、いつまでも神という存在が人々の中にあり続ける。
ただ祈ることしか出来ないから。
ー『SUBARU』の皆にもう一度、会えますように……。悠に…会えますように…。
「もしも神がいるのなら、今回くらいは願いを、運命を、吉へと転じて欲しい。」
目を瞑り、服の裏に忍ばせてある折りたたみ式のナイフを取り出す。
大きく息を吸い、止める。
自らの気配をなるべく断ち、赤髪の男が消えた路地裏へと歩みを進めた。
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