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『SUBARU』を出て、路地裏へと向かう。
きっと彼奴ならそこへ向かっただろうと考えた。
もしかしたら違うかもしれない。反対方向へ向かったのかもしれない。
そんな考えも浮かぶものの、自ら情報屋として、九十九昴の側で培われた勘を信じた。
ー昴…。
無事であることを信じて。必ず会えることを信じて。また、あの笑顔が見たい。
自分にだけ見せてくれる弱さが愛しい。何事にも屈しない強さが愛しい。全てを乗り越えて笑う彼に、心惹かれた。
とにかく必死だった。九十九昴の姿を見て安心したかった。
それだけの思いで、九十九昴を探した。
「この人、見かけませんでしたか?」
目を引く彼奴の事だ。誰か見ていてもおかしくはない。いや、通りすがったのなら、必ず覚えている筈だった。
写真を手に、道行く人に声を掛ける。丁度仕事終わりの会社員が多く、皆家路を急いでいた為に、話を聞いてくれる人、写真を見てくれる人は少ない。
九十九昴が店を出てからそれ程せずに跡を追ったのだ。誰か見ている人がいる筈だと、諦めずに聞き込みをしながら、彼奴の姿を探す。
夜闇でも目立つ彼奴を見つけ出すことは簡単な事だ。今までだってそうだった。まるで自分を見つけて欲しいのではないかとすら思うこともあった。
ー昴…無事でいてくれ!
祈りながら探すものの、一向に見つかることの無い状況に焦りを覚えた。
もしかしたら行き違いで『SUBARU』に戻っている可能性を考えたが、それなら有村春一が連絡を寄越さない筈が無い。
どんどんと増す焦り。
伴う不安。
そして、生じる疑問。
ー……これは本当に、昴の身を案じての焦りだけなのか。
藤城悠は立ち止まり、拳を強く握りしめた。
その拳を見つめ、自らに問う。
九十九昴に知られるのが怖いのではないのか?
軽蔑され、拒絶され、今までの関係が壊れることを恐れているのではないのか?
もしも、九十九昴が彼奴に会ってしまったなら、今までの様にはいかないということに、未練があるのではないのか?
わかっていたことではないか。
いずれ、知れることだと………
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