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午後5時、喫茶を閉めBARの準備をし始める。
午後6時、待ちに待ったBAR『SUBARU』の開店だ。
そう、彼、井端甫は5時から『SUBARU』の玄関口の待合室でずっと、今か今かと待っていたのだ。
「今日は受けてくれるんでしょう?」
先日とは違い、カウンター席に着いた井端甫は早々に話し始めた。今の彼にとっては、席に着いて一呼吸の休息すら惜しいらしい。
「ええ。承ります、井端甫様。」
「何故、僕の名前を…?」
名乗ってもいないのに自らの名を知るBARの店員に、疑問を抱く。
「一見様の身辺は洗いざらい調べるのがこの店のルールでございます。ご不快に思われましたら申し訳ありません。ですが、依頼を受ける以上は依頼人を知る必要があります。」
「いや、構わない。少し驚いただけ。情報屋なんだ…それぐらい知ってて当然だ。」
「ええ、まぁ。それから、依頼を受ける以上は貴方を敬う事は致しません。協力者という同等な立場として考えさせて頂きます。よろしいですね?」
そう、BAR『SUBARU』ではBARの客に対してはとても下手に出て丁寧に扱うが、依頼人となると、それをせず、協力者として同等な立場として扱うのだ。
それは、どの客に対しても変わることはなく、依頼を円滑に進めるために必要な事だと彼らは考えている。
「あぁ。構わないよ。」
「じゃぁ、まず俺たちの自己紹介から行こうか。俺は藤城悠、このBARのマスター、情報屋の取り締まり役ってところかな。」
そう言うと、藤城悠は奥から九十九昴と有村春一を連れてきて、それぞれ紹介した。
「彼らは、ここの店員の九十九昴と、有村春一だ。」
「九十九昴です。甫さんって呼んでもいいかな?」
九十九昴の外見に対しての紹介の仕方に、井端甫は違和感を覚えた。
「いや、呼び方は一行に構わないんだけど。
……君は女性ではないの?」
九十九昴がくすりと笑うと、それすら美しくまるで何か見てはいけないものを見てしまったような気にさせる。
「俺は男だよ、甫さん。」
その言葉に一瞬目を丸めた後、井端甫は申し訳ないとばかりに頭を下げた。
「なに、謝ることはないさ。こんな外見だからよく女に間違われるんだよ、こいつは。」
そう言って、有村春一は3人分の連絡先とBAR
『SUBARU』の連絡先の載っているカードを井端甫に差し出した。
「俺は有村春一。口が悪いのは生まれつき。思った事は直ぐに口に出すから、嫌ならあまり近づかないこった。」
有村春一の毒舌っぷりは九十九昴を一週間、出勤拒否にさせた程に酷い。
本人は人に避けられる事をどうとも思っていないので、治るという見込みは皆無と言っていい。
「なるべく、そうさせてもらうよ。」
カードを財布にしまいながら井端甫は有村春一が苦手であると思った。
「それじゃぁ早速、依頼を聞かせてくれるかな?」
紹介を済ませた九十九昴が優しく声をかける。
「僕の…僕の恋人の情報が欲しいんだ。」
井端甫の言葉に、有村春一は眉を顰めた。
「昨日も思ったけどさ、君、恋人なのにその人の事を知らないの?」
有村春一の言葉に、井端甫は困ったように笑った。
「そう。僕の恋人は、手紙の中の人だから。」
「どういう事か説明してもらえるかな?」
九十九昴の言葉に促されて、井端甫はぽつりぽつりと、自らの甘い恋物語を語り始めた。
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