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井端甫が『SUBARU』に現れたのは、九十九昴と藤城悠が向田篤志に会うために喫茶を出たすぐ後だった。
「いらっしゃいませ…って、甫さん⁈何してんのあんた‼︎連絡するって言ったのに‼︎」
一人で喫茶を切り盛りしなければならない有村春一にとってとんだお客様だった。
「すみません…その…行き場がなくなってしまって……迷惑かとは思ったんだけど…ここは、…兵藤組と関わりがあるし、あの人達も来ないかな…なんて。」
陣内組に追われている井端甫は逃げ場を失ってしまい、唯一の頼れる存在である『SUBARU』に助けを求めに来たのだ。
「…………わかった。奥に入ってな。」
有村春一は井端甫を客席ではなく奥にあるスタッフルームへと通し、喫茶を途中で閉める事にした。
「お客様、大変申し訳ありませんがこちらのお客様をラストオーダーとさせて頂きます。」
それから、喫茶から客が引くまでに5分とかからなかった。
「お待たせ…。で、陣内組の連中は巻いてきたわけ?」
「‼︎」
「驚くな…。それぐらい知っている。依頼人の情報は確認するのが当たり前だ。」
「…そっか……………大丈夫、巻いてきた。だけど、もう時間がない…今あるだけの情報でいい。教えて。」
井端甫に縋り付かれた有村春一は、全てを話す事にした。
「…情報は全て集まった。…相手がどんな奴でもいいんだな?」
「うん、構わない。教えて!」
有村春一は立ち話もなんだと自分の部屋に井端甫を通し、一呼吸置いてから話し始めた。
「あんたの探している相手は…元陣内組若頭向田篤志という男だ。」
「⁈…何故? あの頃に陣内組と関わった覚えはない…」
「あんたは奴を知っているよ。…菅原篤志、あんたの家で世話役をしていた男の本名だ。」
井端甫が口を挟むことはもうなかった。余りにも突飛な話に頭が回らないのだろう。
「向田篤志は陣内組を抜けた後、あんたのお父さんに拾われてあんたの世話役として働き始めた。あんたのお父さんは全て知っていたようだな。…向田篤志は陣内組に追われているんだ…今のあんたと同じ様に。
あんたが今、陣内組の連中に追われているのも、借金を負わされたのも、そもそも家が火事になったのも、全て奴が原因だ。あんたは向田篤志をおびき寄せるための餌として陣内組に使われていたってわけだ。
後は、あんたの知ってのとおりだ。」
5分程沈黙が続いた後、口を開いたのは井端甫だった。
「篤志…が、手紙の相手…………。
手紙の…手紙に書かれていた事は彼の本心だったのり面かな?」
「さぁな。ただ、あんたがもし、あんな男でも向田篤志を、手紙の相手である向田篤志を思えるなら、会いたいと願うなら、俺は叶えてやる。」
「…薄々、気付いてはいたんだ。篤志が相手なんじゃないかって。でも、彼は火事の後姿を消してしまった。資産のなくなった、雇うことのできなくなった僕を捨てた。だから…彼ではないと、思うことにしたんだ。
彼がどんな過去を持っていても、僕は構わない。今の状況を作り出した原因が彼にあってもそれを望んで彼がしたのでないのなら、いいんだ。
彼の本心が知りたい。僕を…彼の元へ連れて行って。」
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