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「痒いとこはございませんかー?」
俺は今、王子様のお御髪を丁寧に洗っている。
尊きお方に触れる事が出来るとは、身に余る光栄である。
「無い」
傷つけない様丁寧に、泡が目や耳に入らない様に心がけながら。
「流しますよー」
「ん」
……。
バシャ。
「〜〜っ!?急に乱暴にするな!吃驚するだろう!」
「五月蝿いな、洗ってやってるんだから文句を言うな」
無心を貫いていたが、紫桜の単調な返事に腹が立って、つい勢い任せにお湯をかけてしまった。
冷水をかけなかっただけ感謝すべきだ。
「髪の洗い方が召使いより上手かったから、褒めてやろうと思ったが、止める。」
「褒め言葉を考えている暇があるなら、風呂の入り方を覚えた方がいいんじゃないデスか?」
──王子様が一緒に風呂に入ろうとしていた理由は単純に、風呂の入り方がわからなかっただけだった。
いつもは召使いに洗わせているんだとか。
貴族は自分で風呂に入らないし、着替えが出来るだけ他よりマシだ等と供述しており…。
「いいから体を洗え」
これが王子様の中では普通で、周りから見ても普通の事で。
「はぁ…。はいはい、仰せのままに。」
俺がイラついているのには気づいていないんだろうな。
泡立てたスポンジで、少し強めに肌を擦る。
また怒られると思ったが、力を込めたまま背中を何往復かしてみたが、反応は返ってこない。
紫桜の後ろに回っているせいで表情が読めないが、痛くないのだろうか。
「紫桜、」
覗き込むと、紫桜は普通の顔をしていた。
でも、唇を少しだけ噛んでいるのが見えた。
「何だ」
「いや、悪い、痛かったよな?ごめん。」
擦ったところが赤い。肌が白いだけに、それがよく目立ってしまう。
一時的な感情に任せて紫桜を傷つけてしまった。
スポンジで強めに擦った程度、直ぐに赤みは引くだろうし、紫桜が文句を言えば何でもないような事だが、紫桜は何も言わなかった。
俺は酷い罪悪感に襲われる。
「いや……。平気だ。」
振り返った紫桜の瞳にあったのは、怒りでは無く、困惑のようだった。
その事に、俺は違和感を覚えた。
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