アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
トラ先生の悪夢④
-
「Tack sa mycket forran nu.Lycka till.」
(いままでありがとう。元気でね。)
美しいスカンディナビアンブルーの空の下、ぼくは見送りに来てくれたホストファミリーやスクールメイト達とかたく握手を交わしてお別れの挨拶をする。
三週間のホームステイは刺激的で楽しく、あっと言う間でぼくは名残り惜しさと、日本に置いてきた人騒がせな恋人に会える嬉しさの矛盾した気持ちに苦笑いをこぼし、何度も手を振りながら同じ高校の仲間達と搭乗手続きに向かう。
トラ先生に勝手に病気の診断書を偽造され学校側に提出されたお陰で、ホームステイが
取り止めに成りそうになったぼくは、流石に頭にきてトラ先生の職場に乗り込み抗議しました。
結果、当然だけれど、職場の同僚の剣持先生やコンビを組んでいる看護師の千田さん、
医者仲間や顧問医先の友人知人から大顰蹙を買い、皆さんがぼくの渡瑞に協力して
くださり無事にスウェーデンに行くことができました。
ぼくがホームステイに行っている間、トラ先生がハンストやその他の危険な行動を取らないように周りの人間に見張ってくれるよう頼んでおいたので、最低限の生命維持はできているはずですし…。
ぼくは少し不安になりながらも、到着ロビーで迎えに来てくれているトラ先生の姿を探す。
きょろきょろと辺りを見回していると、ぼくの方に向かって真っ直ぐに歩いてくるトラ先生が視界に入る。
トラ先生はぼくの目の前に来ると、ぼくの好きなあの大きくて綺麗な猫目でじっと見下ろされ、なにも言わずにぎゅうっと抱きついて来られました。
無言できつく抱き締められ、ぼくは破顔してただいまを言いたかったのに
痩せてしまった身体を小刻みに震わせるトラ先生にたまらなくなり、目頭が熱くなって瞼を閉じると涙があふれだす。
言葉を発しないまま強く強く抱き締めてくるトラ先生に、ぼくは申し訳なさと
会いたかった淋しさと彼のところに帰って来た安堵で、胸が詰まって涙が止まらなくなってしまいました。
ぼくが泣き出したのに気が付くとトラ先生はそっと身体を離して、とびきり優しい笑顔で
「おかえり、あたしの愛しい天使ちゃん。」
そう言ってぼくに触れるだけのキスをして、涙を払ってくださる。
今度はぼくの方からぎゅっと抱きついて
「ただいま戻りました、トラ先生。大好きです。」
心をこめて伝える。
「うふふ。やっと悪い夢から覚めたわ…。」
帰りましょう、トラ先生に指を絡めて手をつながれぼくはにっこり笑ってうなずきました。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
59 / 87