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トラ先生慄く⑧
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早朝、ぼくは学校に向かってファットバイクを走らせながら、知らず知らずのうちに溜め息をついてしまってました。
原因は、ぼくと梶本君がトラ先生のお家で米沢牛のすき焼きをたらふくご馳走になった日から、少々面倒な展開になりつつあることで
「…じゃあ、三年くらい前かしら。」
トラ先生と本家で対面したときの印象的な思い出を梶本君が話すのを聞いて、トラ先生は回想するかの様にしばらく間をおいてから、なんとなく覚えているわと続けました。
「はい。あの日初めてお会いしたときから僕は、古宮先生を心よりお慕いしております。」
ぐつぐつ煮えるすき焼きを目の前に、衝撃な告白を梶本君は口にする。
「……。」
「……。」
「あらぁ!ちょっと、るうちゃん!あたし告白されちゃったわ〜!」
トラ先生は変わらないテンションできゃっきゃとあろう事かぼくに暴投される。
「いや、ええと、…よかったですね。」
梶本君もどういうつもりなのだろうか、いささか混乱した返事を返してしまう。
「…良賀谷じゃなくて、僕とお付き合いしていただけないですか。」
梶本君はぼくの方には目もくれず、正面から真っ直ぐトラ先生を見据えて更に想いを伝える。
「うふっ、ありがとう。でも、それは出来ないわ。あたしはるうちゃんだけを愛しているの!」
バチッと音がしそうなほどのウィンクをぼくにしてみせ、トラ先生はあっさり断られる。
まぁ、恋人として当然ですけれども。
「わかりました。でも、アプローチはさせていただきます。」
今度はぼくを一瞥してから、ずっと古宮先生を忘れられませんでしたと今日の再会を縁あるものだと思いたい、という強い意思を梶本君はきっぱりと告げる。
「ふふふっ、本当に一途で真面目な子なのねぇ。」
トラ先生は柔らかで上質な牛肉を口に運ぶと、もぐもぐ咀嚼をされながら口を引いてにっこり微笑まれる。
それに釣られて、ぼくも思わずすき焼きに箸をのばす。
こってりと割下の染みた牛肉を、溶いた玉子にくぐらせ口に入れたものの、さっぱりその美味しさを味わうことが出来ない。
楚々とした仕草で赤くなった顔を俯ける梶本君と、その様子をただにこにこと眺めるトラ先生を交互に見比べ、ぼくは二人に聞こえない様に溜め息をつきました。
それから、宣言通り梶本君の猛アプローチが始まったのでした。
そして梶本君の厄介なところは、トラ先生の弱みをついてくるところだ。
つまり、ぼくなのだけれど。
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